雪下ろしは超困難 妙高市新井小学校の新校舎

新潟県妙高市の旧新井市街地にある新井小学校は2010年11月、エコをテーマにした素晴らしいデザインの新校舎に生まれ変わった。しかし、竣工したばかりの新校舎に積雪荷重限界の3mに迫る豪雪が襲いかかり、2012年2月、市は雪下ろしを決断することになった。県建設業協会や新潟市消防団など下越の人を中心とした「雪下ろし隊」に支援を仰いで、2月4、5の両日に雪下ろしが行われた。ところが、旧新井市で一番大きな体育館の4倍もある広い屋根に手こずり、1日目は80人を投入したものの歯が立たず、2日目は157人を投入して上半分を下ろすのがやっと。新校舎の雪下ろしがこれほど困難だとは、想定外だったようだ。

雪下ろし2日目の昼ごろの写真。正面からは、ほとんど作業が進んでいないように見える
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新井小の旧校舎は中庭を囲むようにして建てられており、雪はどの方向にも下ろすことができた。しかし、新校舎は2階建てで、屋根の面積は3876平方m(1175坪)と広大である。近くにある旧新井市で一番大きな妙高市民体育館の床面積が972平方mだから、その約4倍の広さだ。

屋根が広いため、中央部の雪をスノーダンプで運ぶ際、最大で24mも歩かなくては雪を落とせない。その上、校舎の北側と東側には雁木が巡らせてあり、雪はいったん雁木に落とし、それを再び下に下ろす必要がある。

以上が、大量に人員を投入しても、仕事が進まなかった原因だ。

北側の屋根はいったん、雁木に下ろす必要がある
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1日目の雪下ろしが終わっても、周囲から見るとほとんど雪が減っていない状態を見て、近隣の住民からは「東京の会社が設計したと聞いた。デザインは素晴らしいが、そもそも雪下ろしなんて考えていなかったのでは」と手厳しい声も。

2日間で延べ237人を投入して雪下ろしは終了したが、校舎の屋根にはかなりの雪が残っているように見える。同市豪雪対策本部に聞くと「広い屋根なので、全部下ろすのは無理。120cmの雪を残す予定だった」という。

同市教育委員会のこども教育課は、「雪下ろしに慣れていない下越の人が多かったので、安全性の確保を優先し雪庇落としから始めたため、1日目は作業が進まないように見えたかもしれない。屋根が広いので作業の動線が長く、効率が悪かった」と話す。

設計を担当したのは東京都品川区の「梓設計」。東京国際空港国際線旅客ターミナルや埼玉スタジアム舎などの著名建築物を多数手掛け、2011年に創立65周年を迎えた一流設計事務所である。

同社のホームページ(http://www.azusasekkei.co.jp/projects/3/2/detail/106)に新井小の設計コンセプトが掲載されているが、「環境調和型建築」「自然素材による温かみのある環境」などが強調されているものの、雪については1字も書かれていない。

同社に(1)雪下ろしをする前提で設計した建物か、(2)雪への設計上の配慮、の2項目についてメールで質問を送ったところ次のように回答が寄せられた。

  • (1)本建物は積雪荷重3.0mで設計されておりますので、それを超えるような積雪の場合は、雪下ろしが必要となります。
  • (2)積雪荷重については、法定基準の2.5mを上回る3.0mで設計を行っております。

◇ 新井小学校の配置図(妙高市ホームページより)
http://www.city.myoko.niigata.jp/kyouiku/arai/haiti.pdf

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