上越市の村山秀幸市長は2011年7月22日、市議会全員協議会で、2005年の合併の際、14市町村ごとに合併後10年間の建設事業などを盛り込んだ地域事業費制度の見直しを表明した。来年度の予算編成からは、各区の地域事業費枠を撤廃し、事業ごとに優先順位を決定する新たな方式に変更する。
上越市に編入された旧13町村が公共施設や道路など合併後10年で行う事業を積み上げた地域事業費は、旧13町村が合併を決断したときの大きな約束の一つだった。合併から10年間の総額は551億円で、このうち旧上越市の配分枠は約288億円。市によると、合併から6年半を経過した中で、当初の制度設計で想定していないことが出てきたほか、土地開発公社の負債の返還などのため、合併前上越市分の地域事業費が来年度には合併時に約束した枠を超えることが確実となった。
このため市は昨年9月に見直し方針を明らかにしてから、延べ70回を超える説明会や意見交換会を開き、理解を求めてきた。「中心部だけが発展し、周辺部には予算が回らなくなるのではないか」など反対する声は根強くあったが、最終的に13区の地域協議会のうち、11区が見直しに理解を示した。三和区、中郷区の2区の地域協議会が反対を表明した。
22日の全員協議会で村山市長は「当市の将来のため、地域にとって、必要な事業を適時に実施できるようにするため見直しを提起した。議会や地域協議会と重ねてきた本気の議論によって総体としてご理解いただいたと確信している」と述べ、来年度予算編成で、地域事業費枠を撤廃することを表明した。
市は今後、今秋をめどに、地域による提案事業や事業ごとの優先度設定の基準を作って市民に公表し、秋以降に来年度の予算編成に入る。
議員からは「約束を守ろうとしないところに怒りを感じる」、財政的な観点から見直しもやむなしという立場で「新たな優先順位のルールで、周辺部にしわ寄せが来ないということの担保が見えない」という声が多かった。また「事業費枠撤廃は制度が破綻したのではなく、新しいまちづくりのための進化と評価する」という意見も出た。