数減少でも超ハイレベル 小中学生科学研究事情

少し前まで昆虫や植物の標本作製といえば、夏休みの自由研究の「王道」だったが最近は少し事情が違う。上越市下門前の上越科学館によると、手間も時間もかかる標本作製を自由研究に選ぶ子どもは減少の一途という。一方そんな中、あえて面倒な標本作成を選ぶ児童生徒の作品は、大人もびっくりのハイレベルなものになっている。

従来、夏休みの自由研究は、一定の学年になると標本作成を課題に指定する学校が多かった。しかし最近は科学、工作、絵画などから文字通り「自由」に選べる形にした学校が増えたという。これにより、何日もかかる天体や植物の観察をはじめ、昆虫や植物、化石などの標本作りなど科学研究は敬遠され、比較的短時間で完成する工作や絵などを選ぶ児童生徒が多くなったという。

上越科学館が市内の小中学生を対象に毎年行っている「標本作品展」には、5年ほど前までは毎年200点を超える出品があったが、今年(2010年)は124点。しかし標本の質は高く表彰式で教育長も審査委員長も「残念ながら点数は減っているが、レベルは非常に高い」と太鼓判。

いくつか実例を見てみよう。

アマガエルの透明骨格標本
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ウシガエルの透明骨格標本
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上の写真はカエルの透明骨格標本。市内の中学2年男子生徒が出品したもの。ホルマリン漬けにしたカエルをタンパク質分解酵素で透明にして、骨の部分に色を付けたものだ。これでも賞は上から2番目の金賞。

「その他標本の部」で最高賞を受賞した「魚の骨の標本」
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透明骨格標本を上回る最高賞を獲得したのが魚の歯の標本で、こちらも同じく中学2年生男子生徒。自分で釣った魚の頭を落とし、茹でて骨をばらし、歯ブラシや歯間ブラシ、ワイヤーなどで丁寧に肉を落とす。3年前と昨年も同じ標本に取り組んでいる。肉を落とす作業は大変で1日に1つ作るのがやっとだったという。しかし今年は入れ歯洗浄剤を使った結果、一度のたくさんの標本がきれいに作れるようになったという。

植物標本の部の最高賞の標本
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 植物標本の部での最高賞は中学2年女子生徒。こちらも1年かけて採取したもので、丁寧に乾燥させ、採取場所、名称、特徴などの記載も極めてしっかりしている。

このほか、数十種類のハチの標本や、化石などどれも見ごたえのあるものばかりだ。

ハチの標本
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化石の標本
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作品展は10月3日まで上越科学館で行われている。