上越市福田の上越テクノセンター内にある三菱化学直江津事業所は東日本大震災前日に廃止されることになっていた自家発電所を再稼働させる準備を整えた。発電能力は一般家庭約15万世帯分に相当する最大8万6000キロワット時。今後、電力不足が見込まれる夏に向けて東北電力の要請に応じて供給する。
直江津事業所は昭和40年代に東洋一と言われる規模でアルミ精錬を行っており、発電装置はそのために整備され、ピーク時には4つの発電所が稼働していた。昭和56年にアルミ精錬から撤退した後は、一番新しい「第4発電所」だけを残し、工場団地に電力を供給していたが、徐々に必要性が薄れ4年前に廃止方針を決定した。
第4発電所は直江津港からパイプラインで供給される重油を燃料にエンジンを回すディーゼル式の発電装置16基からなる。1年以上かけて廃止に向けた準備を進め、今年3月10日に重油を使いきり最後のエンジンを停止した。
16基のディーゼル発電装置が並ぶ三菱化学直江津事業所の第4発電所
しかし、その翌日に東日本大震災が起きた。すでに内示済だった発電所閉鎖に伴う人事異動を一時凍結して長年発電に携わってきた専門の職員を確保し、3月31日付で退職する人の協力も得た。4月18日に再稼働の方針が決まり、現在はいつでも稼働できる状態となっている。
直江津事業所の長尾弘サポートセンター長は「廃止を決めた4年前からは、非常時用のバックアップの電力として東北電力の要請に応じて運転してきた実績がある。このようなときに当社の設備を役立てることができてよかった」と話していた。