NHK大河ドラマ「天地人」の放送で、2009年は舞台となった新潟県の上・中越地方に全国から観光客が押し寄せた。知名度が上がって真価が試される第2ラウンドとなった2010年は、上越市が「越後上越 上杉戦国物語展」、南魚沼市が「戦国EXPO」を仕掛けた。さて、どちらに軍配が上がったのか。
上越市では昨年、「越後上越 天地人博」(1月17日~12月20日)が40万4767人で、「上杉戦国物語展2009」(4月3日~12月20日)は、6万6839人だった。両方合わせて約47万人の入り込みである。
一方、直江兼続の生誕地である南魚沼市で開催された昨年の「愛・天地人博南魚沼」(1月11日~12月27日)の入場者数は43万人だった。
山形県米沢市の「愛と義のまち 天地人博2009」の51万5775人と比べるとやや少ないものの、両市とも、ほぼ互角の入り込みであったと言えるだろう。
さて、今年はドラマによる特需を一過性のもので終わらせないために、工夫とアイデアが必要な年であった。
↓上越市で開催された「戦国物語展」
上越市では3月19日から「上杉戦国物語展2010」を開催した。昨年の天地人博で展示した直江兼続の甲冑のレプリカや春日山城のジオラマを再使用するなど、前年と変わり映えしないパネル中心の展示で、6月27日に会期が終了するまでの入場者数は8004人にとどまった。
↓南魚沼市の「戦国EXPO」
一方、南魚沼市では4月11日から「戦国EXPO」を開催。1か月も経たない5月8日に入場者1万人を達成するなど好調な滑り出しで、6月末までに1万9200人の入場者を集めた。会期終了の11月28日までに、8万人の目標を掲げている。
正念場である2年目は、上越の惨敗となった。というより、去年の実績を引きずって守勢に回った上越に比べ、思い切った展示内容で攻め込んだ「戦国EXPO」の勝ちだったと言える。
↓上杉謙信ガンダムと武田信玄ガンダム"
↓直江兼続戦国無双2フィギュア"
「戦国EXPO」の展示内容は、頭の固い郷土史家や歴史ファンなら、ぶっ飛んでしまいそうな内容である。
「歴女」に「歴ドル」「戦国萌え」などの若い女性を中心にした戦国ブームをご存知だろうか。「戦国無双」や「戦国BASARA」などのテレビゲーム人気に加え、映画やコミック、さらにはパチンコ台にまでブームが広がっている。
文献を元にした従来の歴史研究とは違い、戦国武将をキャラクターとして自由に楽しむものである。写真がない時代のため、武将の姿や顔はどのようにも解釈できるわけで、昨年の大河ドラマ「天地人」に若手人気俳優の妻夫木聡さんを起用したNHKも、このブームを意識していたはずだ。
「戦国EXPO」では、入り口に特大の「劉備(りゅうび)ガンダム」のフィギュアが出迎える。入り口で「戦国絢爛チョコ」をもらって会場に入る。写真撮影が自由というのも、従来の歴史展と異なる。「戦国無双」「信長の野望」ゾーンでは、ゲームに登場する戦国武将のイラストやフィギュアがずらりと並び、ゲーム体験や写真撮影コーナーもある。
さらには、映画の「火天の城」、コミックの「花の慶次」「義風堂々」「伊達の鬼」の原画などが展示されている。
また、コスプレ姿で入場すると500円の料金が100円引きの400円になるというのもユニークだ。
会場内では若い男性がガンダムの模型を熱心に撮影していたり、若い女性グループが歓声を上げていたり、従来の歴史展とは雰囲気が違う。年配の入場者はあきらかにとまどっていた。
主催の戦国EXPO運営委員会に聞くと「35人の運営委員の中に地元の40代の青年が多く、ブームを終わらせないために新たな発想で企画した。行政の発想ではできなかった」という。 「昨年は団体が主だったが、今年は家族やカップルが主体。夏休みはツアー客も入るので、入場者の伸びを期待したい」と話していた。
「戦国EXPO」は11月28日まで南魚沼市六日町の南魚沼市役所隣の特設会場で開かれている。JR六日町駅から徒歩1分。会期中無休。午前9時~午後5時30分。入場料は大人500円、子供250円。問い合わせは、025-773-6702。
なお、上越市では2010年7月23日から、「越後上越謙信公と春日山城展」を開催する。
戦国ブームをもっと知りたい方へ
★「戦国メイドカフェ&バー もののぷ」(秋葉原)
戦国時代がテーマのメイドカフェ。和装のメイド服に鎧のエッセンスを取り入れたオリジナルのコスチューム。客は「お館さま」「姫さま」と呼ばれる。
http://mononopu.com/
★戦国グッズのお店「もののふ天守」(新宿)
戦国グッズ専門のデザインブランド。
http://www.mononofu.net/index.htm
★戦国ダイニング「個室乃世・大河の舞」(新宿)
戦国時代をイメージした空間が自慢の和風居酒屋。上杉謙信が合戦前にふるまったとする「いくさ飯」、武田軍と上杉軍の鎧の色をモチーフとした「赤と黒の決戦鍋」などが人気。
http://r.gnavi.co.jp/g600131/