小川未明の二女、翻訳家の岡上鈴江さん死去

「日本のアンデルセン」「近代童話の父」と言われる上越市高田出身の童話作家、小川未明の二女で翻訳家の岡上鈴江(おかのえ・すずえ)さんが2011年1月27日、心筋梗塞のために死去した。97歳。告別式は2月3日午前10時、東京都杉並区梅里1-2-2堀ノ内斎場。喪主はおいで詩人の雲の如くさん。

1913年、東京生まれ。日本女子大学英文学科卒。外務省勤務を経て、著述生活に入る。著書に「父未明とわたし」「父小川未明」「スウおばさん大好き」「シューベルト」など。翻訳では「嵐が丘」「あしながおじさん」「若草物語」「小公子」「子鹿物語」「フランダースの犬」「クリスマスキャロル」など多数。

春日山神社に建立された「雲の如く」の未明の詩碑
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岡上さんは、これまでたびたび上越市を訪れている。

・1956年(昭和31年)11月18日、上越市の春日山神社(未明の父、小川澄晴が創建)に建立された未明の詩碑の除幕式に父・未明とともに訪れた。

・1971年(昭和46年)には、上越市立図書館と高田文化協会が主催する「小川未明展」の会期中に開かれた「未明を語る夕べ」に参加。

・1975年(昭和50年)に上越市幸町に高田文化協会が建設した生誕の碑の除幕式に参加。

・1977年(昭和52年)に高田図書館で開かれた「岡上鈴江氏を囲む座談会」に出席。

・1978年(昭和53年)の第3回未明忌高田集会には講師として来越。

・1982年(昭和57年)7月3日に開かれた「小川未明生誕百年」記念講演会であいさつ。同年11月に高田公園に完成した文学碑の除幕式にも参列。

岡上さんが会長を務める小川未明文学賞委員会とNTTが主催し、1992年に「小川未明文学賞」を創設した(現在は上越市と同委員会主催)。

2006年に上越市立小川未明文学館が出版した図録「小川未明の世界」では、岡上さんが未明の創作と上越の風土とのかかわりを執筆している。

岡上さんは、小川未明生誕百年の1982年に出版した「父未明とわたし」(樹心社)のあとがきで、次のように述べている。

「父が好きだった妙高山などは、父亡きあともおとずれるわたしたちを変らぬ美しいすがたでむかえてくれる。月の冴えたしずかな晩秋の夜、幼い父に、もうじき雪がふり、まもなく長い長い冬に入るのだよと告げた日本海の海鳴りは、いまもその季節になると、この地の人びとをおとずれるのだろう。人魚のすむ北の海も、相変わらず冷たく、わびしい。こうした大自然には百年の推移はなく、わたしは、そこで父の心といつもふれあうことができるのである」。

告別式は2月3日午前10時、東京都杉並区梅里1-2-2堀ノ内斎場で執り行われる。喪主はおいで詩人の小川英晴さん。

=川村=