長野市にもあった! 日本最古級の映画館

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上越市本町6の高田世界館は、2009年3月まで高田日活として営業していた。1911年(明治44年)に劇場「高田座」として開業し、約100年を経過していることから、「営業している映画館では全国で最古級」としていた。

だが、善光寺にほど近い長野市権堂町の映画館「長野松竹相生(あいおい)座・長野ロキシー」が、1882年(明治25年)に芝居小屋「千歳座」として開業しており、高田世界館よりも古いことになる。

このほど、建築史が専門の土本俊和・信州大学工学部教授が調査したところ、骨組みや屋根を支える部材は明治期のものだということが分かった。

そこで、上越タウンジャーナルは調査隊(?)を編成、長野市へ向かった。同行願ったのは、良い映画が上映されるなら遠くても観に行くという大の映画ファンで、高田文化協会の事務局長の河村一美さんである。

上越から高速道を使って1時間半。長野市の権堂アーケード通りの中心の繁華街にあった。いきなり、田中絹代の映画上映「簪(かんざし)」の手書きポスターが目に飛び込んでくる。田中絹代生誕100周年記念特集の上映で「愛染かつら」「彼岸花」などを連続上映しているという。

取材にうかがった際、上映中の映画は「戦場でワルツを」「ディア・ドクター」「おとうと」など、ちょっとこだわりの作品が多い。映画ファンにはたまらないラインアップである。

支配人の田上真理さんに劇場の内外を案内していただいた。

同館は1882年(明治25年)12月11日に芝居小屋「千歳座」として誕生。こけら落としに市川左団次一座の歌舞伎興行をやったという。

1897年(明治30年)7月7日に、千歳座で活動写真を長野県内初上映を行っている。その後、経営が変わるなど、幾多の変遷があった。1972年から33年間にわたって直営していた松竹が、2006年2月に来館者の低迷から撤退。建物を貸していた長野映画興行株式会社が直営館として引き継いだ。しかし同年6月に近くに複合映画館(シネマコンプレックス)がオープンして、興行的には厳しい状態が続いているという。

明治時代の部材が残っているという建物であるが、映画館内は快適できれいな座席である。しかし、トイレやボイラー室、映写室に入ると、レトロな雰囲気が漂っている。劇場のフロントもガラスのショーケースが並んでいる昔ながらの雰囲気だ。

昭和30年ごろの相生座
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相生座の前身にあたる明治36年当時の千歳座
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建物の外観も、古き良き昔の雰囲気を十分に残している。2007年に長野県でロケが行われた大林宣彦監督の映画「転校生- さよなら あなた-」にもこの建物が出てくる。

「全国でも最古級」の劇場は、石原裕次郎特集、アメリカンニューシネマ、男はつらいよ特集、木下恵介監督特集など、良質の作品や企画を次々と打ち出し、シネコンに対抗しているのがうれしい。

上越市の「高田世界館」と、長野市の「長野松竹相生座・長野ロキシー」が、車で1時間半という近い場所に位置していることも何かの因縁だろう。

映画を愛するファンのための映画館として、これからも長く営業を続けてほしい。

◇「長野松竹相生座・ロキシー」公式ホームページ
http://www.naganoaioiza.com/