津波専門家が上越講演で「地震後5分で逃げろ」

上越市は津波防災の権威である群馬大学大学院工学研究科の片田敏孝教授を講師に招き、2010年年5月と2011年2月の2回、防災講演会を開いた。2011年2月の講演で、片田教授は上越版の「動く津波ハザードマップ」で直江津海岸に押し寄せた津波で浸水が広がっていく様子の動画を見せ、「地震発生から5分で逃げれば犠牲者がゼロになる可能性もある」と話した。2回にわたる講演の内容をまとめてみた。(川村)

上越版の「動く津波のハザードマップ」は、群馬大学大学院災害社会工学研究室が開発している災害総合シナリオ・シミュレータを利用して作成され、災害情報の伝達状況や住民の避難状況、人的被害の発生状況などをアニメーションの形で分かりやすく表現したもの。ハザードマップは上越市のホームページからリンクされていたが、地震後にアクセスできなくなっている。

動く津波ハザードマップの画面
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上越版ハザードマップの動画はDVDになっており、市総務管理部防災危機管理課で町内会などに貸し出している。電話025-526-5111。

◆2010年5月16日の「津波セミナー」

「町内会でリヤカーの確保を」

2010年5月16日の「津波セミナー」
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県と上越市は5月16日、2010年度津波セミナーを上越文化会館で開催し、群馬大学大学院工学研究科の教授で、津波防災の権威である片田敏孝さんが「津波を知って、津波に備える」と題した講演を行った。

講演会は津波に関する正しい知識普及や、避難意識の向上などを図ろうと実施し、約150人が参加した。

講演では津波の発生メカニズム、津波警報があっても避難しなかった住民の実態と心理などについて説明した。片田さんは日本の津波予想は世界一の水準と解説しながらも「到達する津波がいつ最も大きくなるかは予想不可能。技術がどんなに進んでも津波を止めることはできない」と述べ、避難勧告が出たら「自分は大丈夫」と思わず必ず逃げるよう力説した。「津波災害は人間の精神論そのもの。どう向かい合うかで生死が分かれる」と、一人ひとりの意識の持ち方がいかに重要かを説いた。

また、町内会などの自主防災組織に、津波警報などが出たとき避難への意識を高めるため「逃げる」役割を担当する「率先避難者」を設置し、高齢者らすぐに逃げられない人を乗せて運ぶリヤカーを確保しておくことなどを提案した。

◆2011年2月5日の「防災講演会」

「地震発生から5分で逃げろ」

2011年2月5日の「防災講演会」
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上越市は2月5日、津波をテーマにした防災講演会を土橋の市民プラザで開催した。同市と共同で津波防災について研究している群馬大学大学院の片田敏孝教授が講演し、上越市版の「動く津波ハザードマップ」を披露。約90人の市民らが地域防災について理解を深めた。

マップは、県が想定する新潟県南西沖地震が起きた場合、直江津港付近では津波による浸水などの被害がどのように広がっていくか、地図上で動画で見られるもので、片田教授はこのマップを使いながら津波防災について講演した。

片田教授は国内外の津波被害の様子を動画などで示しながら「津波は大きい波が来るというだけでなく、海からの大きな洪水と考えるべき」とした上で「海の地形など条件によって津波の大きさや到達する速さは変わるので、予測は不可能。想定通りになる保証はどこにもない」と強調。「津波は何度もやってくるし、何波目が一番大きいかは分からない。それを念頭において逃げてほしい」と話した。

また直江津港付近についてはシミュレーションから、「地震発生から5分で逃げれば犠牲者がゼロになる可能性もある。テレビや行政などの情報に頼らないで」と話し、「町内単位で避難所を作ったり対応をどうするかを考え、地域での防災力を高めて」と結んだ。

講演会の模様の動画(YouTubeのリンク)
https://www.youtube.com/watch?v=WcNcrHz21nY&feature=player_embedded