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高田名物「スキー汁」の秘密 (レシピ付き)

9年前

郷土食と言うには新しく、郷土料理と言うにはおこがましい。しかし上越地域の子供から大人まで愛され、今では学校給食のメニューにもなっている「スキー汁」。スキー発祥の地、金谷山で滑走訓練に明け暮れる将校らの冷え切った体を温めて空腹を満たし、スキー客でにぎわう金谷山坂下の茶屋などでも供せられた100年もの歴史を持っている庶民の味である。(川村)

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上越を代表するB級グルメ

2月6、7の両日、上越市の金谷山スキー場で開かれた「レルヒ祭」や、高田本町商店街で開かれたレルヒウイーク協賛行事の「くびき野食の祭典in本町」でも、スキー汁が販売され、人気を呼んだ。するめの天ぷら「する天」と並んで、上越・高田を代表するB級グルメとして定着した。

サツマイモと、つきコンニャク入り

1999年に上越調理師協会高田支部が定めたレシピによると、材料は豚バラ肉、サツマイモ、ダイコン、ニンジン、ゴボウ、豆腐、ネギ、つきコンニャク。ニンジンはスキー板を模して短冊切りにする。作り方は豚汁と同じである。(下段にレシピ掲載)

豚汁と違ってジャガイモの代わりにサツマイモを使い、つきコンニャクが入っているのが特徴である。サツマイモの甘さがみそ味で引き出され、寒い夜やスキーで疲れた後には、最高のごちそうに感じられるはずだ。

金谷山の「山のうち」

20100206skijiru2 スキー汁について調べてみた。

まずは郷土料理について書かれた本を探したが、郷土食を網羅した「新潟の食事」(農文研刊)や、「新潟のみそ汁」(新潟日報事業社刊)には名称すら見あたらない。

「スキー汁」は地域のスキー大会で出されたり、最近は給食のメニューにも登場しており、上越地方一帯でさかんに作られていた。近年に編集された郷土料理の冊子を調べると、「高士の食文化」(平成7年/高士地区貯蓄生活設計推進委員会発行)と、「妙高高原・郷土料理」(昭和62年/妙高高原町・同商工会発行)の2冊が見つかった。

作り方を見れば材料にダイコン、ニンジン、ゴボウ、コンニャク、豆腐、豚肉などを使い、みそ仕立てにしている。しかし、これでは豚汁である。なぜ豚汁を「スキー汁」と呼ぶのか。

金谷山にある晴山荘の小菅英晴さんによると「スキー汁はスキー客に名物として出していたもので、昭和35年ごろまであった。子供のころ売れ残ったスキー汁で夕飯を食べたが、それがまたうまかった」と思い出を話す。

たどっていくとスキー汁の販売は金谷山の通称「山のうち」に行き着く。ここでは、冬になるとスキー汁を販売していた。

大鍋に仕込んでおけば、いつ客が来ても熱い汁をすぐに出せ、栄養が豊富で体も温まる。どんぶり1杯10銭と値段も手ごろだった。

スキー汁は人気を呼び、ほかの旅館や茶屋でもこぞって出すようになり、金谷山の名物となった。その味が上越の各地方に広がっていった。

スキー汁にはダイコン、ゴボウ、ネギ、コンニャク、豆腐、豚肉の6種類の具に自家製のみそを入れ、石炭を燃料に大鍋でぐつぐつ煮た。豚汁とほぼ同じ作り方であるが、ジャガイモやニンジンは入れなかったという。

スキーという外国語は新鮮でハイカラな語感で受け止められたらしく、日本酒のスキー正宗、スキーせんべい、スキー人形、スキー小唄などが同時期に誕生している。おそらくスキー汁を豚汁という名称で出していたら人気は出なかったのではないか。

名付け親は長岡外史師団長?

上越調理師協会高田支部によると、スキー汁の誕生は明治44年、オーストリア軍人のレルヒ少佐が日本に初めてスキー技術を紹介した記念すべき年ではないかという。

師団の訓練中に鹿児島出身の将兵が考案した、さつま汁風の汁が原型ではないかという。ジャガイモが一般的ではない時代にサツマイモは、みそ汁の具に好んで使われたらしい。

冷えた体を温めるには最適で、気に入った第十三師団の長岡外史師団長が名付けたとも言われる。

明治45年5月21日、選手100人を集め日本で最初のスキー大会が金谷山で行われ、競技関係者のために用意されたのがスキー汁。その味を再現したのが、上越調理師協会高田支部が作った「公式レシピ」だという。

本来は豚肉ではなくウサギ肉

なお、当時は金谷山にウサギが生息しており、スキー汁には野営地などで調達したウサギ肉を使ったようだ。東頸城などでも昔からウサギ肉のだし汁をソバつゆに使っており、ウサギ肉はポピュラーだった。また、豚肉は手に入りにくかった。

だが現在、ウサギ肉を使ったスキー汁を、だれでも食べられる手軽な料理として売り出すのは無理のようだ。


【スキー汁レシピ(昔ながらタイプ・家庭向き)】

材料(4~5人分)

  • 豚バラ肉 80g
  • ダイコン 75g
  • ニンジン 50g
  • つきコンニャク 75g
  • サツマイモ 75g
  • 豆腐 1/4丁
  • ゴボウ 50g
  • ネギ 1/2本
  • だし汁 (鰹節と昆布でとったもの) 4と1/3カップ
  • 越後みそ 60~65g

作り方

  1. 豚バラ肉は3cmの長さに切る
  2. ダイコンは皮をむいて、縦に四つ切りにして、それぞれ8mm厚のイチョウ切りにし、ニンジンは5mm厚の短冊切り(半月切りも可)にする
  3. つきコンニャクは二等分にし、水にさらしてあく抜きをする
  4. サツマイモは皮をむき、1.5cmの角切りにする
  5. ゴボウは4~5mm厚の斜め切りにして、水にさらしてあく抜きをする
  6. ネギは長さ3cmのぶつ切りにする
  7. 豆腐は2cmほどのさいの目切りにする
  8. 鍋にだし汁と、豚肉、タイコン、ニンジン、つきコンニャク、サツマイモ、ゴボウを入れて煮る。煮立ってしばらくしたら上のアクを良く取り除く
  9. ダイコン、ニンジンなどがやわらかくなったら、みそを入れて溶かし、ネギ、豆腐の順に入れて、煮立てる。
  10. 十分に煮立て、あつあつを器に盛る