まるでテレビドラマ「下町ロケット ヤタガラス編」に出てきた無人トラクターのようだ。田植え機のハンドルから手を離しても、田植え機はまっすぐ進んで行く……。
新潟県上越市板倉区高野の水田で2019年5月18日、GPS(全地球測位システム)を使ってまっすぐに苗を植え付ける田植え機や、スマートフォンやタブレット端末を使って水田への給水を遠隔で管理する多機能型自動給水栓など、次世代に向けた「スマート農業」の実演見学会が開かれた。
新潟県内では上越市と新潟市(2か所)で採択されている農林水産省の「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」は、これからの農業を見据えた事業。スマート農業技術の導入により、収量や品質を安定させ、生産コストの削減などを狙う。上越市や県、えちご上越農協、関川水系土地改良区、企業が参画した「上越市スマート農業プロジェクト委員会」が事業を実施する。期間は2年間で、事業費は4529万円。
見学会は高野生産組合の23haの実証ほ場で開かれ、実際に田植え機などを動かして説明が行われた。
GPSを活用した田植え機は、直線走行や株間が自動で保たれ、初心者でも簡単に田植えが可能。ほ場に駆けつけた高鳥修一農林水産副大臣は、田植え機に乗り込み、手を上げて自動運転であることをアピール。「県内では基盤整備と合わせてやることで生産コストを下げ、農家の収入増や国際的な競争力を高めたい」と話していた。
多機能型自動給水栓は、自宅のパソコンや、外出先のスマートフォン、タブレット端末から遠隔操作でバルブの自動開閉ができる。水田への給水の周期や開始時間、給水時間、バルブの開度などを自由に設定できる。給水栓の開閉のために、水田に行く回数を大幅に減らすことができ、コストの大幅削減が期待できる。
高野生産組合の梨本一好組合長(69)は「初めて見たが、ドラマのようだ。(田植え機が)無人で動くようになればコストが下がり、“儲かる農業”が期待できる」と述べた。