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中ノ俣の畜牛の歴史に幕 最後の農家が牛舎閉める

2か月前

新潟県上越市中ノ俣集落最後の畜牛生産農家、栗崎恵安さん(82)と妻のシヅ子さん(78)が牛舎を閉め、地域産業の長い歴史に幕を下ろした。JAえちご上越の職員が牛を引き取りに訪れた2021年12月6日、2人は牛たちが出荷されていく様子を静かに見送った。

出荷される牛を送り出す栗崎さん(右)と妻のシヅ子さん
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同集落では1931年から、中ノ俣畜産組合が中ノ俣牧場を開き、肉牛の飼育に取り組んでいた。その頃は農耕用に牛を飼っている家がほとんどだったが、農業の機械化が進んだ1965年頃から、収入を増やそうと多頭飼育をする農家が増加。ピークの昭和後期には、約35人の組合員が最大150頭を飼育し、同集落の主な産業となっていった。

栗崎さんも同時期から本格的に畜産を始め、1981年には規模拡大のため他の農家とともに現在の牛舎を建設。牛30頭ほどを飼育し、子牛を育てて出荷する繁殖を牧場で、肥育を牛舎で行っていた。

牛舎で牛の世話をする栗崎さん
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時代の流れとともに、担い手の高齢化や後継者不足のため、牧場は2012年に閉牧。その後は個人で飼育を続けてきたが、5年ほど前から栗崎さんのみとなっていた。

周りが辞めていく中でシヅ子さんは「心細かった。年々自分たちだけでなく、家族や地域の人などの手を借りることが多くなっていた」と数年前から引退を意識してきたという。

栗崎さんが引退を考えたのは昨冬の豪雪の後。牛舎は県道から700mほど山道を登った場所にあるため冬は除雪が入らず、例年1時間ほどかけて歩いて登っていたが、昨冬は約5時間かかったという。

「続けられる限りはまだ頑張りたかった」と栗崎さん。しかし「牛たちのためにも、もし自分たちに何かあり世話ができなくなる前に辞めよう」と決心した。

牛との別れを惜しんだ
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今年は成牛と子牛合わせて7頭を飼育してきたが、この日までに順次出荷。残りの3頭を子牛市場や肥育農家の元に届けるため、同JA園芸畜産課の職員が引き取りに訪れた。2人は牛に寄り添いながら職員と一緒にトラックに乗せ、送り出した。

トラックに乗った牛たちを見送った
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空になった牛舎を見て2人は「まだ実感がわかない。またすぐエサをやりに来るような気分」と感慨深そうに話していた。

今後についてシヅ子さんは「牛中心の生活だったので、少し落ち着いて過ごせそう。これからも2人で力を合わせて元気に健康でいたい」と笑みを浮かべた。

栗崎さんは畜牛農家としての人生を振り返り「共進会で賞を獲った時は本当にやりがいを感じたし、牛のことを考えない日はなかった。楽じゃなかったけど、好きなことを仕事にできて良かった」と語った。

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