空から降ってきた謎の白い綿毛!? 上越地方の市街地で目撃情報相次ぐ

2017年5月12日の朝から昼頃にかけて、新潟県上越地方の市街地を中心に、白い綿毛のようなものが車の窓ガラスなどに付着している現象が見られた。午後2時までに上越市環境保全課に問い合わせが6件あったほか、上越タウンジャーナルにも目撃情報が相次いだ。綿毛の正体はいったい何だろうか。さっそく調査を始めた。

上越地域に降り注いだ謎の綿毛(上越市の佐藤さん撮影)
謎の白い毛2

車のウインドーに付着した綿毛。黄砂も付着している
車に付着

上越市、妙高市の広範囲で目撃

上越市直江津地区の佐藤さんから12日朝、写真と目撃情報が寄せられた。「今朝、車の窓ガラスに白い繊維のようなものが沢山付着していました。会社に行ったところ、道端にもチラホラ同様の繊維が落ちています。同僚の車にも、同じように繊維が付着していたとのこと。これは、一体何なのでしょうか? 石綿!?とか不安になります」という。

春日地区のセロリさんも「空から綿みたいの降ってきて、車の窓にくっついてるけど……何だコレ?」と不安な様子だ。

ガソリンスタンドの高助高田営業所(上越市北城町3)では「今日のお客さんの車は、みんな綿みたいなのが付いてます」と不思議がる。

目撃情報は上越市や妙高市の市街地が中心。車のフロントガラスに付着していたほか、空中を浮遊したり、玉になって道路上を転がっていた。

謎の生物「ケサランパサラン」か?

“空中を漂う白い毛玉”といえば、年配の人なら1970年代後半に全国的なブームとなった「ケサランパサラン」が思い当たる。江戸時代の古文書にも書かれている謎の生物で、おしろいを食べて成長し、捕まえると幸せになると言われる。

果たして幸福を呼ぶケサランパサランなのだろうか。

昆虫の分泌物、植物の綿毛、動物の毛だろうか?

綿毛を100倍に拡大
顕微鏡写真2

上越市環境保全課では市民からの問い合わせが相次いだことから、綿毛状のものは「害虫が分泌する物質ではないか」と、確認を急いだ。もし、人間に害を及ぼす物質だとしたら一大事だからである。

昆虫では、綿くずが飛んでいるように見える「雪虫」というアブラムシの仲間がいるが、これは秋の夕方に飛ぶので該当しない。

ほかに、植物ではタンポポの綿毛、動物ではウサギの体毛などが考えられる。

正体はヤナギの仲間の綿毛だった!

上越環境科学センターが綿毛を分析したところ、セルロースが検出され、植物由来のものだということが判明した。

ネコヤナギ、ポプラ、シロヤナギ、ヤマナラシなどのヤナギ科の植物は、綿毛をまとった種子を大量に飛散し、空中を漂うという。上越市内には街路樹に使われたり、河川敷などに自生しており、その綿毛が飛散したのだろうか。

それなら、毎年このような目撃情報の問い合わせがあってもいいはずだ。だが、上越市環境保全課では「これまで、そのような問い合わせが寄せられたことはない」と話す。

中国・北京から飛んできたのか?

北京の街では毎年5月、白い綿毛に包まれた柳の種やポプラの種が空中を漂う光景が見られる。「柳絮」(りゅうじょ)といい、春の風物詩にもなっている。

上越地域に降り注いだ綿毛には、黄砂も付着していた。上越市高田では前日の5月11日は、午後7時頃まで西寄りの風が吹いており、黄砂とともに海を渡ってやってきたのだろうか。

【結論】関川河川敷のヤナギの綿毛だった!

道端に吹き寄せられた綿毛(上越市の佐藤さん撮影)
2017-05-12綿毛

植物を専門にしている上越環境科学センターの計画調査課、山本聡子主任によると、「関川河川敷のシロヤナギやオノエヤナギなどのヤナギの仲間が盛んに綿毛を飛ばしており、ヤナギの綿毛に間違いない」という。ヤナギの仲間でも、ネコヤナギや、街路樹に使われるポプラではないという。

「実の付き方が毎年違い、大量に飛ぶ年と少ない年がある。今年は条件が良かったのだろう。今日は風が弱かったので、市街地付近へ飛んだのではないか」と話す。中国から飛来した可能性については否定している。