気象庁が2016年5月6日、新潟焼山(2400m)で、ごく小規模な噴火が発生したと発表したことについて、新潟県妙高市渋江町の火山地質学者、早津賢二さん(71)は、「これから噴火が活発になれば、早川沿いへの融雪型泥流や、妙高市と上越市への降灰に注意が必要」と呼び掛けている。
気象庁は観測用にヘリコプターを2回飛ばし、6日に山頂東側の噴気孔周辺で降灰を確認したことから、正式に“噴火”を発表した。しかし、自宅付近から毎日焼山を観測している早津さんは、「1月下旬の最初の噴火から、これまでに少なくとも6回は噴火している」と話す。
「噴火」は火山灰が200~300m飛ぶことで、「降灰」と同じ意味。降雪期なので、雪が降った後に降灰があれば雪が黒っぽく見えるので、確認できる。最初の噴火は1月下旬で、2回目が3月15日頃、3回目が3月20日頃、4回目が3月26日頃、5回目が4月中旬、6回目が5月1~2日だという。
今後の噴火の推移だが、「焼山に観測機器を設置してから初めての噴火であり、まだ噴火の兆候や規則性が不明。今後は収束するのか、活発になるのか、まったく分からない」と話す。その上で、「噴火が活発になれば、早川沿いに流れ下る融雪型泥流の危険や、焼山の東側にある妙高市や上越市では降灰の被害が発生するおそれがある」という。
1974年の噴火の際は、降灰のために屋外プールが使えなくなったり、視界不良で交通事故が起きたほか、葉たばこなどの農作物に被害が出たという。
焼山の噴気孔は妙高市から真正面に見え、観察がしやすい。現在の噴気は、BとE地点が最も多く、AやFは以前より少なくなった。CやD地点からも出ており、だんだん広がってきているという。
焼山の火山活動は、糸魚川市に設置してある監視カメラで、気象庁が東京から24時間監視しているが、糸魚川市方面からは噴気孔が見えない。2007年に高田測候所が無人化されたため、焼山を目視で観測できなくなった。「測候所があれば、問い合わせの窓口にもなり、地元の声が聞こえてくるはず。火山の近くに住み、肌で感じながら観測する人が必要ではないか」と話していた。
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