新潟県上越市の市立水族博物館「うみがたり」のイルカがオープンから2年で4頭が死んだ問題で2021年2月10日、同市教育委員会が設置した第三者の専門家による検証委員会(委員長、吉岡基三重大学大学院教授)の検証結果が公表された。イルカは日本海の眺望を重視した屋外プールで飼育され、もともと飼育されていた太平洋側の横浜市との気候の違いに適応できず、死に至った可能性があるとされた。
日本海に面したうみがたりの屋外プールでパフォーマンスするイルカ(2018年6月)
同日開かれた上越市議会文教経済常任委員会で市教委が説明した。検証委は大学教授5人の委員で構成し昨年7月から3回の会合を開き、5日に報告書を市教委に提出。飼育、建築、水質の三つの観点から検証し、建築と飼育に一定の問題があると結論付けた。
建築の問題として、死んだイルカがうみがたりの特徴である日本海と視覚的につながる屋外プールで飼育されていたことから、夏の暑さや直射日光、冬の低温や日本海の強風をまともに受けていたと指摘。このため、もともと飼育されていた太平洋側の横浜市と気温や日射、風などの気候の違いにイルカが適応できず、免疫力の低下につながり死に至った可能性があるとした。また飼育プールによっては、隣接した機械室のろ過槽やポンプの振動音がイルカのストレスとなった可能性があるとしている。
2頭が死んだシロイルカのうち最後に死んだ1頭については、1頭だけになったことによる精神的負荷が死につながった可能性を指摘している。
一方で、飼育の人員体制や輸送などについては問題はないとされた。また、プールの表面積が他の施設と比較して狭い傾向があるが、それ自体がイルカにストレスを与え死の要因になった可能性はないとされた。水質についても特定の問題はなかった。
検証委は日本海側の気候に対応した施設の早期改修を提言しており、市教委は新年度予算でプールの開口部や周囲に対策を行う予定。すでにプールの水位を低下させることでプールの壁を防風壁に利用するなどの取り組みを行っている。
市教委の柳澤祐人教育部長は、日本海側特有の気候については市、指定管理者、設計者で議論した上で設計したとし、「指摘は逃れようのない事実。検証結果を真摯に受け止め、二度と繰り返さないように関係者で検討し、より良い水族博物館にしていきたい」と述べた。
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