ノルディック複合で五輪3大会連続メダルを獲得している渡部暁斗選手(37、北野建設)によるジュニア選手の育成プログラムが2025年9月6日、新潟県妙高市関川の妙高高原体育館で行われた。県内の小中高生23人が参加し、トップアスリートから体の使い方や競技への向き合い方などを学んだ。
スキー人口の拡大と競技力の向上を目指し、県と県スキー連盟が昨年から取り組む「にいがたスポーツタレント発掘・育成事業」の一環として行われた。
講師の渡部選手は長野県白馬村出身で、高校生だった2006年のトリノで五輪初出場。2014年のソチ、2018年の平昌のいずれも個人ノーマルヒルで銀メダル、2022年の北京で個人ラージヒルと団体で銅メダルを獲得している。ワールドカップでは2017〜2018年シーズンに個人総合優勝を果たした。今季で現役引退する意向を表明しており、2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を集大成と見据える。
この日は講話から始まり、自身の経験を踏まえた五つのテーマで語った。競技への向き合い方についてはピラミッドに例え、「ジャンプ1本で積み重ねると心の余裕がなく崩れやすい。競技に直接つながらないことでも、興味があることはやって、広く土台を作ることで安定して高いところまで行ける」。また「メダルを取ることが目標になってはいけない。その先で何をしたいか考えると、メダリストは通過点になり夢が近づく」と呼び掛けた。
子どもたちからの質問も受け、今後の目標について問われると「次のオリンピックで金メダルを取ること。全盛期が過ぎ37歳で取れたら奇跡的。奇跡の瞬間を皆に見せたい」と意気込んでいた。
実技では「ジャンプが上手くなるには、上手くなる準備が大切」と自身が日頃行うストレッチなどを伝授。あおむけになって助走姿勢を取らせ、体の硬い部分や力の入れ方もアドバイスし、参加者は真剣な表情で動きをまねていた。
市立妙高高原中1年の男子生徒(13)は「(渡部選手は)かっこよく、足の使い方を分かりやすく教えてくれた。家でもやってかっこいい姿で飛べるようになりたい」と目を輝かせていた。
渡部選手は「競技人口が減る中、熱意のある子が一人でも多く世界で活躍してくれたら」と願った。