新潟県上越市中央3の市指定文化財「ライオン像のある館」(旧直江津銀行)に立つライオン像を制作した柏崎市の石工、小川由廣(よしひろ、1880〜1955)の作品をまとめた「小川由廣のライオンたち」を2024年11月、柏崎市のエッセイスト春口敏栄(としえ)さん(63)が出版した。直江津のライオン像の制作過程をはじめ、樺太(現ロシア・サハリン州)の神社に奉納されたライオン像、そのほか独創的な由廣作品の実像に迫る一冊だ。
春口さんは2019年から、地元柏崎では注目されてこなかった大正から昭和にかけて活躍した由廣と作品について調べている。今年1月には同市を中心に各地に残されたライオン像などを紹介する「彫刻師小川由廣を探して」を出版した。
街歩きのガイド本的な第1弾に対し、今回出版した第2弾は、新たに見つかった作品の下図や由廣自ら海を渡って現地で彫った樺太のライオン像など、5年にわたる丹念な調査の成果を「全て」(春口さん)掲載。直江津のライオン像は、下図や試作品と思われる複数の小作品、古写真を元にその制作過程を推察した。
春口さんによると、これまでに大小15体のライオン像を確認しているが座像は直江津のみ。当時家1軒が建つほどの破格の2000円で、「直江津の石炭王」こと高橋達太氏からの注文だった直江津のライオン像は、由廣のライオン像の原点であり、出世作であり、唯一無二のものであるという。
春口さんは「来年は由廣の没後70年。上越の皆さんが直江津のライオン像を大切にしていたおかげでさまざまな発見につながった。(由廣作品を)観光資源として役立て、上越と柏崎の文化交流につながれば」と話している。
400部を作成。A4判フルカラー、44ページで1650円。第1弾の「彫刻師小川由廣を探して」(A4判フルカラー、32ページ、935円)と併せ、上越市内では春陽館書店(本町4)で販売している。
由廣作品の調査状況は春口さんのFacebook、Xで随時、発信している。問い合わせはnorinocc@coral.ocn.ne.jpへ。