新潟県上越市教育委員会は2023年11月15日、今年9月に市立小学校で起きた給食アレルギー事故を受け、市立小中学校の教職員を対象にした緊急対応の研修会を同市下門前の上越市教育プラザで開いた。今回の事故では、発症後の児童を1人にし、アナフィラキシーショックを抑える自己注射薬「エピペン」の使用が遅れるなど、学校の緊急対応に問題があったことが分かっている。
研修会の講師は、アレルギーの専門医で、被害児童の主治医でもある「小児科すこやかアレルギークリニック」院長の田中泰樹医師。エピペンを処方されている児童生徒が在籍する小中学校30校の担任や管理職、養護教諭、消防職員など約70人のほか、ライブ配信で全ての小中学校の教職員が参加した。
被害児童は重度の牛乳アレルギー。栄養教職員や調理員が食材の確認を怠ったことから給食のスープに乳成分が含まれる食材が使われた。児童はアナフィラキシーショックを起こし、救急搬送され一時入院した。事故後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になり、2か月以上たった現在も生活に支障をきたしているという。
田中医師は「死亡してもおかしくない誤食事故。(当該の)学校の対応が上越市の標準レベルだとすれば、また事故は起こるし、今度は死亡事故かもしれない」と警鐘を鳴らした。
そして「できるだけ早く発症に気付き、できるだけ早くエピペンを打つ、できるだけ早くショック体位(仰向けで足を15〜30cm高くする)をとる、できるだけ早く病院へ搬送する」と、緊急対応の重要ポイントを挙げた。
またエピペンが処方されている児童生徒には、嘔吐や腹痛、咳、のどや胸が締め付けられる、呼吸困難、意識もうろうといったアナフィラキシーが疑われる症状が一つでもある場合は、「迷いがあるのは理解できるが、本人に確認する必要もなく積極的にエピペンを打つ」と訴えた。練習用を使ったエピペンの打ち方の説明も行った。
男性教諭の一人は「これまでエピペンを打ったことがなく、実際にその時になったら手が震えるかもしれないが、適切な行動ができるように普段からイメージしておきたい」と話していた。
田中医師は「アナフィラキシーショックが起きたらエピペンというのが鍵で、いざという時に命を守るために誰もが打てるように心の準備をしてほしい。言葉が悪いかもしれないが、今回の件を反面教師にして『早く打たなければ』という思いでいてもらいたい」と話した。
市教委は事故の検証を行い、有識者らの意見を入れた事故報告書を来年1月に公表するとしている。