新井市街地の昭和レトロな手打ちラーメン店「杉村屋」が閉店

新潟県妙高市白山町1の老舗ラーメン店「杉村屋」が2023年11月15日、戦前から続くのれんを下ろした。店主が高齢で麺が打てなくなり、13日夜に閉店を決めた。15日昼にのれんを下ろすという突然の出来事に、常連客から落胆する声が相次いでいる。

地元の人は親しみを込め「杉村そばや」と呼ぶ。昭和の雰囲気が漂う店舗(2019年撮影)

「杉村屋」は戦前に杉村真さんが創業。店を切り盛りする妻との名コンビで新井の人に親しまれた。2代目の眞市さん(84)が後を継ぎ、10年ほど前から長男一男さんの妻、礼子さん(49)が店を手伝っている。

メディア初公開の麺打ち場。青竹を使って生地をのし、包丁で手切りする

機械を使わない完全手打ちのラーメンは、こねた強力粉を青竹を使ってのすという大変な力仕事。高齢のため麺を打つ体力が続かなくなり、閉店を決めた。

店内もレトロな雰囲気

店舗はテレビもある茶の間風の小上がり1室と、テーブル3席の小さな店で、混み合う時間帯は相席が暗黙の了解。コロナ禍以降は夜の営業を休止し、最近も夜は予約のみの営業に縮小していた。

一番人気だったチャーシュー麺(2019年撮影)

麺は手切りのために太いのも細いのも交じる豪快なもので、量も多い。スープは豚骨のみで取った優しい味が特徴。常連客の男性(70)は、「宴会が終わってから食べに来るのが定番コース。この店の中華そばは胃にもたれず、二日酔いの日でも食べられる」と話す。

昼夜を問わず、中華そばをつまみに焼酎やビールをちびちび飲む客が多い“新井特有の食文化”が生まれ、夜は日付が変わる頃まで営業していた頃もあったという。

常連客が大半だが、近年は店舗からにじむ昭和レトロの雰囲気が人気を集め、遠方から食べに来る客が増えたという。

15日昼すぎ、最後の客となった市内の主婦(67)は、「戦時中は小麦粉が配給されず、麺を打てないときもあったと聞いている。最後のラーメンなので、味わって食べ、スープまで完食した」と、ビールを飲みながら話した。また、市内の会社員女性(60)は「午後から有給を取って駆け付けたが、間に合わなかった」と残念がっていた。

礼子さんは「今まで大変お世話になりました。これまで来ていただき、ありがとうございました」と話していた。

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