治水対策として新潟県上越市の保倉川の水を日本海に放流する保倉川放水路について検討している関川流域委員会が2023年7月26日開かれ、国交省高田河川国道事務所は気候変動による水害の激甚化などに対応し、放水路のピーク流量を現行の関川水系河川整備計画の毎秒700立方mから同900立方mに引き上げる計画変更の骨子を示した。放水路の幅などの概要は次回の同委員会で示し、本年度内の計画変更を目指す。
河川整備計画の変更は、今年3月の関川水系河川整備基本方針の見直しを踏まえた。基本方針は近年、水害による甚大な被害が頻発していることから、気候変動による降雨量の増加などを考慮し降雨量を1.1倍に変更した。
基本方針に基づく整備計画は2024〜2053年度の30年間が対象期間。変更骨子では関川の基準地点・高田のピーク流量を毎秒2600立方mから同3200立方mに引き上げた。保倉川の松本(頸城区)では同1500立方mから同1700立方mに増やし、保倉川放水路は同700立方mから200立方m引き上げ同900立方mとした。保倉川本川は同800立方mで変更はない。
このほか、川の水を一時的に貯めることで川や用水路の急激な水位上昇を軽減させる「田んぼダム」の拡大や水害に強い地域づくりなど、河川管理者の国や県だけでなく市町村や企業、住民など流域全体で治水対策を行う「流域治水」についても、新たに整備計画に盛り込む。
今後のスケジュールは、次回の同委員会に放水路の具体的なルートや幅など河川整備の実施内容を盛り込んだ変更原案を示す。関係住民の意見聴取などを経て、本年度内の計画変更を予定している。変更された整備計画に基づき、放水路整備などの事業に着手する。
保倉川放水路は、関川水系に甚大な被害をもたらした1995年の7・11水害を受け、保倉川本流を頸城区で分岐させ日本海へ放流する計画。放水路で地域が分断されるとして地元の強い反対があり、長い間計画は進まなかった。現行整備計画は2009年に策定されたもので、その後地元の理解が進み2021年3月、同委員会は頸城区下三分一付近から県営南部産業団地東端を通り、上越火力発電所付近で日本海に出る幅200m、延長約3kmの西側ルート案を妥当とした。