治水対策として上越市の保倉川の水を日本海に放流する保倉川放水路について検討している関川流域委員会は2020年12月23日、同市土橋の市民プラザで会合を開き、国交省が示した2つの概略ルート案のうち、同市頸城区下三分一から同市夷浜を通る西側のルート案を優位と判断した。最初にルート案が示された1996年以来、約四半世紀を経て治水計画が大きく前進する。今後は住民説明会などを経て、来年度以降に河川整備計画変更などの手続きが進められる。
保倉川放水路とは
保倉川放水路は、関川水系に甚大な被害をもたらした1995年の7・11水害を受け、保倉川本流を頸城区で分岐させ日本海へ放流する計画。1996年に国が放水路案を示したが、地域が分断されるなど地元の強い反対があり、長い間計画は進まなかった。国が2019年3月に幅1km放水路の新たな「概略ルート帯」を公表し、放水路の白紙撤回を求めてきた夷浜町内会が現地調査の受け入れを表明するなどして、調査が進められてきた。
国は2案を提示
河川整備について有識者や市民団体などが意見を述べる関川流域委員会ではこの日、地域の分断を最小限にすることや確実な治水効果、環境への影響などの観点で検討された幅200mの2案が示された。
2案いずれも頸城区下三分一付近の保倉川から、上越火力発電所付近で日本海に出るルート。Aルートは延長約3.6kmで、ほ場の中央部を通過し、複数の既存鉄塔の移設の必要がある。Bルートは、Aルートより西側の県営南部産業団地東端を通り、延長約3km。
西側ルート優位と判断
河川工学的な比較結果、地域の分断がより少なく、延長が短く、洪水被害の軽減効果が大きいなどとして、委員会の総意で西側のBルートが優位と判断した。
年度内に住民説明会など
今後は、国交省が年度内に住民説明会を開いた後、同委員会で意見を検討し、来年度以降、放水路を実現する河川整備計画の変更に取り組む。小池俊雄委員長(土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター長)は「災害はいつ起きても不思議ではない。スピード感を持って先に進めてほしい」と話した=写真=。
村山秀幸上越市長は「放水路整備による地域分断については、地域の理解を得ながら十分に議論してほしい。地域の企業や工場が安全に安心して操業できるように、これから出る課題にも速やかに対応してほしい。市民も地域住民も期待しているプロジェクトで情報を共有しながら一緒に進めていきたい」と話した。