戦後の昭和時代を生きた人なら誰もが食べたレトロな袋の「牛乳パン」。長野県内では約20店が今も販売を続け、地域のソウルフードとして人気を集めている。かつては新潟県上越地方でも、駄菓子屋や学校の売店でも売られたポピュラーなパンだったが、今では上越市1店、糸魚川市1店だけになってしまった。上越と北信地方の現況を調べてみた。
「牛乳パン」は、パン生地に牛乳を練り込み、焼いてから切り分けて、バタークリームをはさんだもの。発祥は良く分からないが、昭和時代に入って牛乳の消費増加に伴い、誕生したパンらしい。
栄養価が高い牛乳をイメージした乳白色のパッケージに、レトロ調の子供や牛の絵が描かれているのが特徴だ。いのや商店(糸魚川市)、小林製菓舗(豊野)、岩崎(小布施)がほぼ同じ絵柄。カバンを肩からかけている男の子のデザインが印象的だが、良く見ると、絵のタッチや線の太さなどが微妙に違っている。丸十製パン清水商店(信濃町)と、廃業したキムラヤ(妙高市)が同じデザイン。デザインはやや垢抜けているが、英語で「COW BRED(牛パン?)」と書かれ、Breadの綴りが違う。
○……上越市内で牛乳パンを製造・販売しているのは、寺町2の「岡村製パン店」1店のみ。同店は昭和2年創業で、その頃から牛乳パンを製造していたという。袋のデザインは、基本的に変わっていない。本店の「ヌベールおかむら」のほか、イオン上越店や労災病院売店、上越市役所売店にも卸している。生産量が少ないため、すぐに売り切れることがある。電話025-523-3518。
○……糸魚川市で牛乳パンを製造・販売しているのは、本町の「いのや商店」1店のみ。60年以上も変わらない味とレトロな袋が人気で、帰省した人がまとめ買いするなど、「いのや」を代表する商品になっている。白、黄、ピンクの3色ある「牛乳パンTシャツ」も同店で販売している。電話025-552-0260。
○……妙高市中町の「キムラヤ」 でも牛乳パンを販売していたが、2014年9月に廃業してしまった。二代目の池亀善一さんは「店は昭和30年創業だが、いつから牛乳パンを作ったかは分からない。懐かしさで買っていく人が多かった」と話す。
○……長野県に入ると、信濃町柏原の「丸十製パン清水商店」は、昭和30年代の創業だという。電話026-255-2154。同じ柏原の「カド万商店」も牛乳パンを販売していたが、2014年2月に廃業してしまった。
○……飯山市飯山田町の「木村屋製パン店」は、「牛乳パンは戦後に店を再開してからではないか」と話す。牧場の柵に少女が腰掛けているパッケージである。電話0269-62-2469。
○……長野市豊野の「小林製菓舗」も昭和30年の創業で、約60年の歴史を持つ。電話026-257-2267。
○……小布施町の「小布施岩崎」は文久2年の創業だが、「牛乳パンは昭和30年代頃からではないか」と話す。観光客が、懐かしがってまとめ買いしていくそうだ。傷みやすい暑い時期は販売しない。製造数が限られているので、予約すると良い。電話026-247-2200。
○……松本市大手4の松本城近くの路地にある「小松パン店」は、大正11年創業の老舗パン店。松本名物としても有名な「牛乳パン」は、パンも分厚いがクリームの量がすごい。日曜、祝日が定休なので注意。電話0263-32-0172。
【注】上越市の岡村製パン店が牛乳パンを製造・販売していたことが分かり、記事の一部を書き換えました(2015年5月11日)