現在放映中のNHK大河ドラマ「西郷どん」に西郷吉之助(隆盛)の弟、吉二郎役で出演中の俳優、渡部豪太さん(32)が2018年9月1日、戊辰戦争で戦死した吉二郎の墓がある新潟県上越市の「金谷山官修墓地」を訪れた。県内の北越戊辰戦争で戦死した薩摩藩関係者が眠る「薩藩戦死者墓」に手を合わせた。
西郷家の次男として生まれた吉二郎は、兄隆盛の波乱の生涯の裏側で貧困にあえぐ西郷家を、薩摩の地で一家の大黒柱として支えた。1868年に勃発した新政府軍と旧幕府勢力が戦った戊辰戦争に従軍。本県での北越戊辰戦争に出兵し、三条市付近で起きた五十嵐川の戦いで負った傷がもとで同年36歳で戦傷死した。
同墓地には、薩摩藩をはじめ長州藩や高田藩など、北越戊辰戦争や西南戦争で戦死した官軍方の戦死者の墓がある。薩藩戦死者墓は、柏崎にあった薩摩藩の戦死者14人の墓と金谷山の吉二郎ら66人の墓の合葬墓として1915年に建立され、現在は地元住民などが掃除などを行っている。
すでに出演シーンの撮影を終えている渡部さんは、この日長岡市で開催される大河ドラマのトークショーの出演にあわせて墓参りを希望。前日から上越入りし、高田公園の市立歴史博物館を見学後、NHK制作部ドラマ番組部の櫻井賢チーフ・プロデューサーらと金谷山を訪れた。
歴史博物館学芸員の説明を聞きながら、ゆっくりと墓前に立った渡部さんは、墓碑の脇に刻まれている吉二郎の名前をじっと見つめたあと、献花し手をあわせた。
墓参り後、渡部さんは「たくさんの方の思いが眠るこの場所にやっと来れたというか、来るべくして来れたという思い。感慨深い」と話した。吉二郎役は「兄の吉之助さんが京や江戸で頑張っているのを支える優しい侍だったのではないか」という思いで演じたという。
また初めて訪れた上越市について、「歴史博物館を見学し、『北の玄関』というか特殊な地域なんだと感じた。(墓地の存在は)悲しい場所ではあるが弔って頂いていて、故事に思いをはせる場所があることはうれしい気持ち。来れてうれしいです」と語った。
渡部さんはこの後、同じ金谷山にある戊辰戦争で敗れ高田藩に預けられ命を落とした会津藩士らが眠る「会津墓地」も訪れた。