郷愁あふれる絵画 妙高市出身の後藤はつのさんが113歳で死去

子供の頃に遊び回った明治時代の赤倉温泉の自然などを、郷愁あふれるタッチで描いた新潟県妙高市出身の画家、後藤はつのさんが2017年5月15日、誤嚥性肺炎のため東京都墨田区の自宅で死去した。113歳だった。このほど親族が明らかにした。

2回目の個展に臨む107歳の後藤はつのさん(2010年9月 妙高高原メッセ)
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後藤さんは1903年(明治36年)9月2日生まれ。実家は現在の赤倉ワクイホテル。脳の老化防止に73歳で油絵を始め、81歳から99歳にかけて100号以上の大作に挑戦し、作品を展覧会に出品した。1986年、82歳で描いた作品が現代童画展で新人賞を受賞。1996年、96歳のとき「明治24年の遠足 苗名の滝」が現代童画展で文部大臣奨励賞を受賞した。102歳のとき銀座で初個展、108歳で諏訪市の原田泰治美術館で絵画展を開催。地元妙高市でも2度の個展を開催し、多くの人が足を運んだ。

文部大臣奨励賞を受賞した「明治24年の遠足 苗名の滝」
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100歳を越えてからも好奇心いっぱいで、絵筆を置いてからも海外旅行や、百人一首、詩吟、書道などに次々と挑戦。2011年には、読売新聞社が主催するニューエルダーシチズン大賞を108歳の最高齢で受賞した。

実家の赤倉ワクイホテルによると、はつのさんが妙高市を訪れたのは、2010年9月に妙高高原メッセで開かれた2回目の絵画展が最後だという。

2015年2月には、そのスーパーレディぶりを紹介した「111歳、いつでも今から」(河出書房新社刊)を発刊。著書の帯には、2012年に上越文化会館で講演したこともある聖路加国際病院名誉院長の日野原重明氏が、「はつのさんは私にとって人生のモデルです」と推薦文を寄せている(2017年7月18日、105歳で死去)。

はつのさんは、現在発売中の「PHP」8月号に「好きなことを楽しむ」のタイトルで寄稿。「何かを始めるのに遅すぎることはない。できるかできないかではなく、やるかやらないか」というモットーについて書いている。

ふるさとの懐かしい風景や凧揚げ、スキー、お祭りといった子供時代の思い出が描かれた後藤さんの絵画は、赤倉ワクイホテルの館内で展示中。

2010年9月に妙高高原メッセで開かれた個展での、インタビューをどうぞ。

後藤はつのさんへのインタビュー(2010年9月)