新潟県上越市の上越教育大学付属小学校で長年使用されずに校舎の片隅で眠っていた、世界三大ピアノの「スタインウェイ」の復活計画が進んでいる。戦前の1927年(昭和9年)製造のグランドピアノで、音は鳴るものの老朽化が激しく、修復費用は約350万円。同校は、来年の創立40周年記念事業として、卒業生やゆかりの人々などに広く寄付を募ることにしている。
復活計画がスタートした付属小のスタインウェイ(上越教育大学付属小提供)
付属小で長年忘れられ老朽化
スタインウェイ&サンズは、ベーゼンドルファー、ベヒシュタインと並ぶ世界最高峰のピアノブランド。低音の音量の豊かさと高音の伸びの良さなどが特長で、世界の名だたる音楽家から絶大の信頼と評価を得ている。
同校のスタインウェイピアノは、長年多目的ホールに置かれたままで使われていなかった。いつの間にかその価値も忘れられ、フリスビーや卓球のラケットの置き場にもなっていたという。ところどころ塗装が剥がれ、ペダルは外れたままで、鍵盤は黄ばんでいる。近年は脚の強度が弱まり危険なため、ビールケースを重ねて支えにするほど老朽化していた。
修復費用200万円寄付募る
今年、古い備品記録や関係者の証言、譜面台の透かし彫りなどから、同校の前身が付属校だった高田師範学校から引き継がれたものと分かった。同校は「古いものや歴史を大切にしながら新しい時代を切り開いていってほしい」という児童への願いを込め、スタインウェイピアノ復活計画「音故知新プロジェクト」をスタート。修復費用約350万円のうち、約200万円を在校生の保護者や卒業生、趣旨に賛同する人などからの寄付で賄うことにした。寄付は年明けから受け付ける予定。
県外で1年かけて修復
ピアノを分解するオーバーホールによる修復は約1年かかる見込みで、2021年10月1日の創立記念日に間に合わせるため、11月9日、ピアノは埼玉県に移送された。移送を控えた4日には、児童4人が弾き納めの演奏を披露し、しばしの別れを惜しんだという。
弾き納めでモーツァルトの「ピアノソナタ第10番」を演奏した5年生の男子児童は「スタインウェイと知ってすごくびっくりした。音が全然違う。ピアノの歴史の重みを大切にしていきたい。戻ってきたらショパンを弾いてみたい」と期待に胸を膨らませていた。
「ストリートピアノコーナー」設置へ
2021年秋の創立40周年記念式典で復活したピアノをお披露目し、その後は校内の多目的ホールに「ストリートピアノコーナー」の設置を計画している。
山之内知行教頭は「修理費用は国内メーカーの新品のピアノが2台買える値段。あえて古い価値あるものを修復し大事にする趣旨に賛同いただければ」と、支援を呼び掛けている。問い合わせは同校 025-523-3610。
▽上越教育大学付属小学校ホームページ https://element.juen.ac.jp/