上越市の風力発電1号機廃止へ 地球環境都市のシンボル 耐用年数迎え更新せず

新潟県上越市は新年度、直江津港南ふ頭のみなと風車公園に設置している風力発電1号機の運用を停止する。再生可能エネルギーの普及啓発を目的に全国でも先駆け的に設置され、同市が宣言した「地球環境都市」のシンボルとなっていたが、2月に耐用年数を迎えた。同市は「初期の目的を達成した」として新たな風力発電施設は設置しない方針だ。

みなと風車公園に設置されている風力発電1号機
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地球環境都市のシンボル的存在

同市は1998年に全国の市としては初めて環境マネジメントの国際規格ISO14001の認証を取得(2011年に独自システムに移行)したほか、同年に環境に配慮したまちづくりを誓った「地球環境都市宣言」を行うなど環境問題に先進的に取り組んできた。

直江津港と三の輪台に3機

風力発電1号機は環境への取り組みのシンボル的施設で、2001年3月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から建設費の2分の1の補助を受け、約2億円をかけて設置した。翌2002年と2003年には三の輪台いこいの広場(同市五智国分)に2、3号機を設置しているが、これらも来年以降順次耐用年数を迎え、廃止される見通しだ。

落雷などで1年以上故障も

2月に耐用年数を迎えた1号機は、ドイツ製で高さ50mのタワーに長さ23mの羽根が3枚ついていて、出力は600kW。発電した電力は一部を公園内の施設に使用し、残りは東北電力に売電していた。2016年度は、一般家庭約146世帯の年間電力使用量に相当する64万1265kWh(キロワット時)を発電した。一方、冬の日本海側特有の落雷の被害を受けて頻繁に故障し、運転停止を繰り返してきた。過去には1年以上にわたって停止したこともあった。昨年12月にも落雷の被害を受け、部品の生産中止で修理できず運転を停止したまま、2月の耐用年数を迎えた。

維持管理費かさみ赤字運営

落雷と経年劣化による相次ぐ故障は、三の輪台いこいの広場(同市五智国分)に設置された2号機(2002年設置)、3号機(2003年設置)、名立区のうみてらす名立機(2003年設置)も同様で、2016年度は4機あわせてのべ321日間停止した。同年度の売電収入は約3271万円に上るが、維持管理と修理費用が合計約5585万円のほか建設時の借金の返済もあり、一般会計から約4065万円を風力発電事業の特別会計に繰り入れている。

三の輪台いこいの広場に設置されている2号機と3号機
風力発電23号機

「所期の目的達成した」

市では1号機について「所期の目的を達成した」として今後、運用を停止する。「高さもあり大規模なものなので撤去費用もかなりかかる」(環境保全課)として、しばらくはそのままにしておくという。最新の風力発電機は1号機に比べて出力が5倍以上と性能が向上しているが、設置した場合の費用は約5億円が見込まれるとして、市は新たな風力発電施設の設置は行わない考えだ。2019年には2号機が、2020年には3号機とうみてらす名立機(落雷被害で2016年12月から停止中)が順次、耐用年数を迎え、これらについても廃止する方針という。