「ベンチ型あんどん」上越市大町5で夜の雁木下照らす 長岡造形大生が制作

新潟県上越市大町5の町家が連なる雁木通りに2023年3月、夜の雁木下をほのかに照らす木製の「ベンチ型あんどん」が設置された。建築やインテリアを学ぶ長岡造形大学(長岡市)の学生が、雁木のある町を研究する中で考案し、卒業作品として制作した。

大町5の夜の雁木下を照らす「ベンチ型あんどん」

制作したのは、同大造形学部建築・環境デザイン学科4年の上野加奈子さん(22)。上越市吉川区出身で県立高田高在学時に高田の街並みに風情や歴史を感じ好感を持っていたことから、雁木を題材に選んだ。現地調査や住民へのアンケートで、雁木下は夜は暗く歩くのが困難なことが分かり、昼間はベンチにもなり、雁木通りに溶け込むデザインのあんどん制作を思い付いたという。

制作した上野さん(左)と協力した後輩の学生

大きさは長さ75cm、幅25cm、高さ44cmで、雁木を歩く人の通行を妨げないよう、あえて幅を狭くした。町家の格子と景観を統一させるため、デザインに格子を取り入れ、電球の明かりが格子から漏れる設計。太陽光パネルを取り付けたことで電気代や電池交換は不要で、夜暗くなると自動点灯する。

縦置き型のあんどん1台とベンチ型あんどん4台を制作し、大町5を中心に高田地区の街並みの保全活動に取り組むNPO法人「街なみFocus(フォーカス)」(岸波敏夫理事長)に寄贈した。同法人は大町5のほか、今後、町家の瞽女ミュージアム高田(東本町1)、きものの小川(本町7)の雁木下にも設置する。

電球を囲むように格子が組み込まれている

14日に現地に設置した上野さんは「格子部分の加工が難しく、時間がかかった。(ベンチ型あんどんが)町に溶け込んで、日常生活の当たり前のようになってほしい」と話した。

上野さんを指導した同大の羽︀原准教授(47)は「ヒアリングやアンケート、イベント参加などで地域の人と繋がりを作っていった過程や、普通の家具と違った特殊な構造やデザインもうまくまとまっていている」と評価。寄贈を受けたまちなみフォーカスの岸波理事長は「貴重なものを頂き、心強く誇りに思う」と喜んだ。

上野さんの制作を機に、全国各地で建築や環境デザインを学ぶ学生が地域特性を踏まえた木造加工物を企画、設計、制作する「木匠(もくしょう)塾」が、同大に設立された。活動に参加する上野さんの後輩が来年度以降も制作を引き継ぐことで、継続的に高田の雁木通りの環境整備を目指すことにしている。

ベンチ型あんどんの設置場所

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