春日神社「御剱祭 南方位登山」の歴史発信 地元有志で「起源式」

郷土の戦国武将、上杉謙信の代参として五穀豊穣などを願って妙高山に登る伝統行事「御剱祭 南方位登山(みつるぎさい なんぼいさん)」が伝わる新潟県上越市本町1の春日神社(大島美香宮司)で2022年7月18日、その由来を紹介する「起源式」が初めて開かれた。登山者が謙信に出発を報告する場面の再現なども行われ、集まった近隣住民らが450年以上続く同祭の歴史に思いを馳せた。

白行衣姿の登山者が謙信に出発を報告する再現シーン

同祭は1570年、謙信が領内の五穀豊穣や家内安全、商売繁盛、子孫繁栄を願い、南の方角にある妙高山山頂の阿弥陀三尊像に参拝することを思い立ち、当時の林泉寺和尚に代参登山を依頼したことが由来とされている。

謙信が信仰していた剣に龍が巻き付いた不動明王の化身「倶利伽羅不動尊(くりからふどうそん)」を描いた御旗が春日神社氏子に託され、領内の一村一名が小旗を持って供をし、その数は1359本にも上ったという。

2020年の南方位登山の様子(2020年7月22日撮影)

現在も途切れることなく継承しているのは春日神社氏子のみで、今年で452回目を数える。起源式は歴史ある同祭を地域に広く知ってもらおうと、地元有志が企画し、新調した御旗のレプリカのお披露目も兼ねて行われた。

お披露目された御旗のレプリカと大島宮司

式では南方位登山の起源の解説があった後、謙信の出陣の儀式「武てい式」の保存に取り組む「一義会」が武てい式を披露した。今回特別に同祭に10年以上参加し、先達を担う三重県四日市市の高校教諭、山門浩さん(62)も登山の白行衣姿で参加。謙信から「御旗を掲げ、我に代わりいざ参られよ」との言葉を受け、「ありがたきお言葉承って候」と応えると、会場からは激励の拍手が送られた。

謙信への報告を終え登山に向かう場面を演じる山門さん(右)

山門さんは「450年以上神社と氏子で地元の行事として続いているのはすばらしい。上越の人にも広く知ってもらいたい。安全に登って帰ってきて、神前に報告したい」と意気込んだ。

大島宮司(40)は「地域の一人一人が祭りの意義、歴史を学ぶことが後世に残っていくことになると思うのでありがたい」と話していた。

同祭は毎年22、23の2日間にわたって同神社などで開催される。今年の登山には21人ほどが参加を予定している。