上越市吉川区の3セク酒蔵「よしかわ杜氏の郷」売却先公募

新潟県上越市は厳しい経営が続く第3セクターの酒蔵「よしかわ杜氏の郷」(吉川区)について、企画提案型のプロポーザル方式で、7月中旬から売却先を公募する。国内に本社がある企業を対象としており、同区内や市内の企業が地域性で優位となる評価基準を設ける。

上越市吉川区の「よしかわ杜氏の郷」

2022年6月22日に開かれた上越市議会文教経済常任委員会所管事務調査で、市が公募条件や評価基準、スケジュールなどを説明した。よしかわ杜氏の郷は1999年に旧吉川町が設立したが、7期連続で純損失を計上するなど経営不振が続いており、市は昨年12月に民間譲渡の方針を示していた。

市は「酒造文化と技術の継承を通じ、町の発信や産業振興に寄与する」という同社の設立目的から、公募の条件には、従業員の雇用継続、同区内の酒米や水を使用した酒造りなどを盛り込んだ。売却額は株式評価により1株当たり8167円と算定し、市が保有する3041株を含む発行済全株式3683株を売却先企業が取得する場合は約3000万円かかる。広く公募参加を促すため、算定された売却額を下回る提案も受け付けるという。

公募は7月中旬から10月中旬まで行い、10月下旬に優先交渉者を決定し、早ければ年内に株式譲渡契約を締結する。売却先の選定では地域性を重視し、同区内企業を最大に市内、県内の順に加点する項目を設ける。

議員からは「加点はわずかで、国内を対象とすれば、競争や資本の原理で吉川の酒文化などに精通した地元企業に有利に働くのか」との懸念の声が上がった。

五十嵐裕産業政策課長は「公有財産の売却では一定の競争性も必要。地元企業であっても厳しい経営状況から回復し継続できなければ、当初の目的が達成できない」と説明。小田基史副市長は「資金繰りの問題もあり、会社を存続できるかを見極めた上での提案。仮に手を挙げる方がいなければ、解散も覚悟している」と理解を求めた。