新潟県上越市本城町の市立総合博物館をリニューアルし、2018年7月にオープンする上越市立歴史博物館の改修工事がこのほど完了した。高田城の歴史を紹介するプロジェクションマッピングやタッチパネル式の散策マップなど、随所に最新のテクノロジーを導入し、上越の歴史に特化した資料を展示する。3月27日には上越市議らが視察に訪れ、内部が公開された。
1階床面には巨大な航空写真が
入口からほど近い1階ラウンジの床面には、同市の5500分の1の航空写真を配置。28の地域自治区ごとに配置されたQRコードをスマートフォンなどで読み込むと、高田城や春日山城など、地区ごとの文化財や史跡などの情報が端末の画面上に表示される。航空写真は住宅を1軒ずつ見分けることができるなど、解像度も高い。
都の変遷をプロジェクションマッピングで
2階に設けられた常設展示コーナーでは「越後の都」、「雪国のくらしと民俗」など全5章のテーマに沿った資料が並ぶ。第1章「越後の都」では、直江津にあった越後国府から春日山、福島、高田へと都が変遷していく様子をプロジェクションマッピングで投影する。上越の地形を立体的に再現した模型に投影することで、リアリティーのある映像を楽しむことができる。展示の目玉となる予定だった上杉謙信の愛刀で国宝の「太刀無銘一文字(号山鳥毛)」は、市が購入を断念したことにより飾られないが、謙信が愛宕神社(国府1)に奉納したと伝わる軍配などを展示する予定だ。国指定文化財で、上杉家に伝来したとされる越後国頸城郡絵図も展示されている。
第2章「徳川の城」のエリアには、17世紀の高田城周辺の町並みを再現し、3つのルートから探訪できるタッチパネル式の散策マップや、550分の1サイズの高田城の模型などを展示する。第5章「雪国のくらしと民俗」では、高田の豪雪の様子を紹介する写真パネルや高田瞽女をテーマとした絵画が並ぶ。雁木通りを模した展示スペースもあり、雪国特有の雪下駄などが展示されている。市民から寄せられた昔の写真を紹介するコーナーも用意した。
高田城を望める展望デッキも
3階には広さ約170平方mの屋上展望デッキを整備。高田城三重櫓や妙高山などを眺めることができる。観桜会などの時期には高田公園の桜を思う存分、鑑賞することが可能だ。
館内には新たにエレベーターが設置されたほか、ショップや喫茶店などが入る予定。アルコール類の販売も検討している。イベント時には建物の白い外壁を利用し、プロジェクションマッピングの投影を企画している。2階の展示スペースは入館料が必要で、一般500円、小中高生250円。市内の小中学生は無料。
訪れた市議らはこの日、1階の床面に印刷されたQRコードをタブレット端末やスマートフォンなどで読み込むと「これは面白い」などと感嘆していた。屋上デッキでは「観桜会の時期に来たら景色が良さそうだ」などと評価した。
総事業費は約5億3000万円。オープン予定日は7月21日。視察を終え、市議の1人は「展示室のデザインやしつらえはとても良かった。屋上デッキも人気が出るのではないか」と語った。同館の宮崎俊英館長は「屋上から見える高田城が一番の展示品になる。上越の歴史を知ってもらえる場になってほしい」と期待を口にした。