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【検証】なおえつうみまちアート 7000万円かけ来場者9000人 中川市長「来年度は実施せず」

2か月前

新潟県上越市の直江津地区で今夏、初開催された現代アートの芸術イベント「なおえつ うみまちアート」について、中川幹太市長は開会中の市議会で、来年度は実施しない考えを明らかにした。予算約7000万円で58日間行われたイベントには、「のべ2万2176人」が来場したと発表されたが、実際に訪れた人数は約9000人。実行委の決算資料などからこのイベントを検証しつつ、先月就任した中川新市長の見解を紹介する。

初開催された「なおえつ うみまちアート」
20210731うみまちアート開幕5-2

「良品計画」との協定で開催

なおえつうみまちアートは、上越市と「無印良品 直江津」を出店している良品計画、頸城自動車の3者が締結した地域活性化の包括連携協定に基づき、まちなかでの現代アート作品の展示を通じて直江津地区の活性化を目指そうと、市などによる実行委員会が主催した。会期は2021年7月31日の前日祭から9月26日までの58日間。船見公園周辺や安国寺通りなど、直江津地区の4か所に首都圏などの8組の作家による作品を展示し、入場無料で開催した。

船見公園周辺の海岸に展示された「そらのみなと」
20210801そらのみなと夕方

来場者の実人数は?

「のべ2万2176人」という数字は、作品のある4会場とインフォメーションセンターの合計5か所にそれぞれ訪れた人の数の単純合計。新型コロナウイルスの感染対策で、来場者は最初の会場の受付で渡される固有の番号が書かれたリストバンドを付けて各会場を巡った。実行委が購入した来場者リストバンドは1万枚で残数などから実人数は9000人だった。

なおえつうみまちアートのエリア図
うみまちアートマップ-1

「商品券」で来場者急増

来場者の75%が市内からだった。9000人の約2割に当たる2000人は、500円の商品券をもらったスタンプラリーの参加者だ。実行委の助成を受けた地元の商店連合会が会期終盤の9月の土日曜、祝日に、5か所すべてを巡ると直江津地区で利用できる500円の商品券がもらえるスタンプラリーを実施。複数回商品券をもらった地元住民もいた。

実行委の山田知治会長は10月22日に開かれた実行委の会議で、「8月は天気が良かったがあまり集客できず、9月になってスタンプラリーをやったら集客が上がった。直江津における文化度を上げていく必要がある」と述べた。

予算7000万円の使いみちは?

イベント開催予算は約7000万円で、決算見込みでは約6400万の費用がかかった。内訳は作品制作・設置・撤去費などが合計約2430万円、特設会場の空き店舗整備や会場賃借料などに約890万円、受付スタッフ人件費など管理運営費約1040万円、広報費に約1030万円。このほか作家との交渉やイベント全体をプロデュースしたキュレーターへの委託料330万円など。

これらは税金と企業からの協賛金などで賄われた。税金は、国の交付金3400万円、企業版ふるさと納税1420万円、市の一般財源1980万円の計6800万円。企業協賛金は約413万円。残額約894万円を実行委から市へ返納するという。「市の持ち出しは最小限」(実行委事務局)と説明するが、国の交付金も税による負担であることに変わりはない。

実行委「何らかの形で継続を」

実行委の会議では、「大成功だった」「直江津の魅力を発信できた」「直江津に芸術の要素を入れたのは斬新だった」など、一定の評価をする意見が大半を占めた。

一方で、「作品に物足りなさを感じた」「地元作家の作品も展示したらよかった」「地元の人が手伝いに終始して主役になれなかった」「建前論だけで人は集まらない」などの意見も出た。来年度以降については「大々的ではなくても、何らかの形で継続を」との意見でまとまり、市に伝えた。

学識経験者や地元商工団体、美術関係者などが委員を務めた実行委員会
DSC_2102

中川新市長の考えは?

上越市議会12月定例会で安田佳世議員(久比岐野)が12月10日、中川市長にこのイベントについて一般質問した。

中川市長は「作品の鑑賞やワークショップを通じて様々な出会いや交流が生まれたほか、市民団体自らがアート作品を展示することなどで多くの人を呼び込み、所期の目的はおおむね達成できた」と総括。一方で、実質3か月の準備期間で事業を実施し、地域とともに考える一定の時間や作品の質を確保するための事業費、市民の自発的取り組みを地域の活性化につなげる議論などが必要と課題を挙げた。

中川市長は「事業費や準備期間、実施体制などの課題の整備には一定の時間を要し、来年度の実施は難しい」として「事業の目的を整理した上で、あり方を検討していく」との考えを示した。

*費用については実行委の最新の会議資料をもとにしています。

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