日本軍の捕虜となったアメリカ兵ルイス・ザンペリーニさん(2014年7月に97歳で死去)が、収容所での拷問と虐待に耐え、母国に生還を果たすというアンジェリーナ・ジョリー監督の映画『アンブロークン』が、2014年のクリスマスに全米で公開された。後半に日本での捕虜虐待の場面があり、新潟県上越市川原町にあった直江津捕虜収容所が重要な場面として描かれている。反日感情をあおるとして日本の一部から反発が出たためか、日本公開は未定だという。
映画原作は日本軍の捕虜となり、虐待されたというアメリカ人、ルイス・ザンペリーニさんの生涯を、ノンフィクション作家、ローラ・ヒレンブランドさんが書いた小説。2012年12月に出版され、20か国以上に翻訳されてベストセラーになっているが、日本版は出版されていない。
ザンペリーニさんは、陸上選手として1936年のベルリン・オリンピックに出場した後、アメリカ空軍に入隊。飛行機の墜落で太平洋を47日間漂流し、2年間にわたり日本の捕虜になった。戦後は伝道師としてキリスト教の布教に務め、再来日を果たした1950年には服役中の戦犯に面会。その後、捕虜時代の恩讐を越えて、減刑の嘆願運動を行っている。
映画では後半、捕虜が大森捕虜収容所(東京都)から直江津捕虜収容所に移送される。そこで捕虜たちは、劣悪な生活の中、石炭の荷役などの重労働をさせられ、暴力や虐待を受ける。重い角材を持ち上げた状態で立たせたりする場面もある。映画は、保倉川で水浴びしている場面で、終戦を迎える。
上越市で元捕虜との交流などの活動を進めている「上越日豪協会」の近藤芳一会長は、原作も映画も英語版で既に見ている。「原作は直江津捕虜収容所のほか、現在の平和記念公園も出てきて、真実に基づいた非常に素晴らしい内容だ。映画の直江津捕虜収容所はシドニーで撮影され、大きな工場や建物が描かれるなど実態と異なる。映画は原作より落ちるが、直江津の捕虜収容所が知られることはむしろ喜ばしい」と話している。
なお、ザンペリーニさんは1998年の長野オリンピックで来日し、1月22日に上越市内の第1区間を聖火ランナーとして走った。当時81歳のザンペリーニさんは「終戦後の帰国の際は後ろを振り返ることができなかったが、今回上越市離れる時は、きっと振り返ることができるだろう」と話していた。
本作品は、米アカデミー賞の撮影賞、音響編集賞、音響調整賞にノミネートされたが、受賞はならなかった。