上越市民のソウル・フードともいえる東雲町1の塚田そば店(通称つかそば)の「かけ中か」が、文化放送で平日午前に放送される人気ラジオ番組「純喫茶・谷村新司」で、2012年の1~2月に計3回も取り上げられた。この番組を通じ、和風だしに中華麺を入れて食べている地域は、新潟県上越市のほか富山県射水市の2市だということが明らかになった。
そばやうどん用の和風だしに中華麺を入れて食べること自体、それほど奇抜なことではなく、全国では他にもあるはずだ。しかし、それがソウル・フードと言われるまで市民権を得ているのは、珍しい。
番組のパーソナリティ(マスター)を務める谷村新司さんは2月13日の放送の中で、上越市の「つかそば」について、「絶対合うのよ。和風だしに中華麺を入れ、天かすとネギをのせたもの。なんと220円! 天かすとネギが入っているのが、両方つないでいる感じがしますよね」と、絶賛している。
番組では富山市のアミーゴさん(51)からの投稿が紹介され、富山県射水市では「かけ中(かけちゅう)」と呼ばれ、射水市役所新湊庁舎(本町2)の食堂や、新湊のきっときと市場で食べることができるという。30~40年前に盛んに食べられたようで、「新湊が発祥で直江津に流れてきたのかもしれない」という。
どちらが発祥の地(?)か調べるために、上越市東雲町1の塚田そば店へ急行し、竹内誠社長に話を伺った。平日の午前10時だというのに、駐車場はほぼ満車。店内には人があふれている。土日曜には行列もできる人気店である。
竹内社長は「谷村さんはこの店には来たことがないはず。もしかしたら、20年前に直江津駅前からここに移転する前ではないか。バスケットボールの五十嵐圭選手が良く食べにくるので、その話が伝わったものかもしれない」と首をひねる。
同店のメニューでは「かけ中か」と書く。「中にはこんなの中華じゃない、と怒る人もいる。和風スープなのであえて"中華"とはしなかった」という。
その「かけ中か」のルーツであるが、同店は60年ほど前、直江津駅前で麺の卸専門として開業。駅構内で立ち食い店を出店していたが、駅前の麺工場でも食べられるようにしたのが店の始まり。「お客さんからの要望で、そばつゆに中華麺を入れたのが始まりだと聞いている。かけ中華は開業直後から、やっていたはずで、富山とは何の関係もない」と話す。
竹内社長は3代目。「ほかの店でもまねしたけれど、続かない。そばつゆにラーメン用の麺を入れてもおいしくないよ。うちは自家製麺なので、和風だしにあった麺をつくっている。どんな麺かは企業秘密」と話す。
どんどんバリエーションを広げ進化しているラーメンの中で、この素朴な味の「かけ中か」は昔のまま変わらず、1杯220円という値段も税抜き価格は20年間据え置きだ。
営業時間は午前8時から午後7時まで。火曜定休。電話025-543-2252。
なお、かけ中華は、上越市大和3のそば店「越善」のメニューにもある。
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