♪むかし、むかし浦島は、助けた亀に連れられて、竜宮城に来てみれば、絵にもかけない美しさ♪
日本のおとぎ話で、唱歌にもなっている「浦島太郎」に出てくる竜宮城は、海神の宮のことである。日本各地に浦島伝説が残っているが、新潟県糸魚川市能生の弁天岩の近くに竜宮の入り口があることをご存知だろうか。
弁天岩は国道8号沿いの能生海岸にあり、能生漁港へ出入りする漁船の大切な道標である灯台が設置されている。岩の中央部には海の守り神である「市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)」を祭神とする祭神厳島神社がまつられている。また、岩の上部には山形県善宝寺の祭神「龍神」がまつられ、真っ赤な鳥居が建てられている。
さて、竜宮城であるが、1936年(昭和11年)、37年(昭和12年)に上下巻で発刊された「西頸城郡の伝説」(西頸城郡教育会編)に次のような記述がある。
「能生町能生の弁天岩の後に、弁天岩に沿うて十間足らず延びてゐる岩を松ケ崎といふ。この両岩の間には九尺程離れて居り、水深は底知れず、竜宮への途だといつてゐる」
果たして竜宮へ通じる入り口はあるのだろうか。弁天岩に行ってみた。
弁天岩には北側(海側)に突き出ている岬があり、これが松ケ崎なのだろう。長さは「十間」というから約18mであり、目測ではぴったりだ。そして、その先に「九尺」(約3m)離れている小さな岩が確かにあった。岬と岩の間が竜宮の入り口なのだろうか。水深は底知れずというのが、なんだか恐ろしい。
本に記述された場所は確かに存在した。だが、竜宮伝説は今も残っているのか。周辺の市民や漁業関係者、約10人に尋ねたところ、全員が「知らない」「聞いたことがない」という。
近くに住み、弁天岩についてくわしい糸魚川ジオパークの公認ガイド、小竹一郎さんに聞いても、「初めて聞いた。まるで夢のような話だ」と驚くばかり。
糸魚川市教育委員会の木島勉学芸員も、「西頸城郡の伝説」に記述があることは知っていたが、いまも伝承されているかどうかは分からないという。
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