心に染み入る除夜の鐘、名立区の「竜宮の鐘」

新潟県上越市名立区小泊にある宗龍寺に数奇な運命をたどった梵鐘がある。海から引き上げられて260年以上過ぎた今でもその音色は美しく、心に染み入るような余韻を残す。この鐘は2011年12月31日から2012年1月1日にかけての「除夜の鐘」としてもならされる。

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梵鐘は高さ106センチ、口径54.5センチ、重さ67.5キロ。安土桃山時代以前の古い鐘で、深みのある緑青色をしている。1751年(宝暦元年)に上越地方を襲った大地震の際、「名立崩れ」と呼ばれる大規模な山崩れが起きた。小泊集落一帯が土砂とともに海中に押し流されてしまい、梵鐘は寺とともに海の底に沈んだ。

災害から100年余り経過した明治初年、小泊村に再び人々が住み始めるようになった。そのころから地元漁師の間で不思議な海鳴りが噂されるようになった。海底から沸き上がるように鈍く響き渡る海鳴りは昼も夜も続き、海の神様の怒りではと、漁に出るのを恐れる者もいた。

ある日、勇気ある漁師が異様な海鳴りのわけを突き止めようと、来る日も来る日も海底に潜り、見つけたのがこの梵しょうだった。漁師は丁重に引き上げると、再建されていた宗龍寺の本堂に奉納した。以来、異様な海鳴りはピタリとやんだという。

その後、梵しょうは竜宮に住む乙姫様からの奉献の品とされ、「竜宮の鐘」と呼ばれるようになった。いまも毎年、除夜の鐘として打ち鳴らされている。

岡田泰雄住職(86)は、「この鐘は戦時中に供出されるところだった。鐘のいわれを知る名立出身で、当時糸魚川小学校の月橋正樹校長が県に申請書を出すなどして奔走し、供出が延期されて助かった経緯がある。鐘は海中で荒波にもまれたのか、64個のいぼのうち、27個が欠けている」と話す。

では、数奇な運命をたどった宗龍寺の梵鐘の音を聞いていただきましょう。


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