上越市在住・宮崎さんの原作漫画が今年の1位に

漫画の神様、手塚治虫の活躍の舞台裏をノンフィクションで描いた漫画「ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~」(秋田書店)が、宝島社の4大大賞の一つとして知られる「このマンガがすごい!2012」(2011年12月24日発行)のオトコ編の1位に選ばれた。漫画の原作者は上越市在住の宮崎克(みやざき・まさる)さん(55)で、ペンネームを使い分けながら「100万$キッド」「人形草子あやつり左近」「松田優作物語」などの多くの原作を手がけている。漫画は吉本浩二さん。

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「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」などで名を馳せた手塚も、1970代の劇画ブームでスランプに陥り、アニメ制作が失敗して虫プロダクションが倒産するなど、冬の時代を迎える。手塚が復活を果たしたのは医療漫画「ブラック・ジャック」だった。

同著は、その連載当時、来る注文は拒まず、面白さには妥協しない手塚と、アシスタントや編集者を巡る舞台裏を描いた。「週刊少年チャンピオン」に2009~2011年にかけて掲載された読み切り企画で、好評だったことから単行本化された。2011年7月20日に刊行し、12月まで5版を重ねている。

原作者の宮崎さんは直江津高校を卒業後、大学進学で上京。29歳のときに漫画原作者として独立し、ミステリー、時代劇、ドキュメンタリーなど、幅広いジャンルを手がけた。10年前に故郷の上越市に戻り、地方に住みながら仕事を続けている。

今年のベスト漫画となった同作品は、手塚の元スタッフや元編集者ら約30人に取材し、手塚の隠れたエピソードを発掘した。原稿を見た編集者が「イマイチかな」とつぶやいたため、締め切り後に20枚を8時間で書きなおした話「壁の穴」や、100ページの企画を描き上げた後に「ブラック・ジャック」の連載を1日半で描き上げた話、過去に描いた作品や、本棚の資料をすべて暗記していて、アメリカから電話で作画の指示を出す話など、驚きの逸話を収録。子供のような手塚のあふれる好奇心と、創作への煮えたぎるような情熱や努力がうかがえる。

「このマンガがすごい! 2012」では、原作者の宮崎さんと、漫画家の吉本さんの対談が6ページにわたって収録されている。宮崎さんは受賞の喜びを「うれしいと同時に、驚いています。ノンフィクション作品がこれほど支持されるとは思ってもいませんでした」と語っている。