8月に入ると上越地方の朝市や野菜直売所に、ピーマンに似た激辛野菜「ブタコショウ」が並び始める。「オニゴショウ」の名称で上越野菜にも登録されており、ほかに「ボタゴショウ」「デブゴショウ」「シシゴショウ」などさまざまな呼称がある。(2011年8月14日現在)
独特の辛味が暑い夏にぴったりで、焼いたり、しょうゆ漬け、天ぷら、佃煮などさまざまな料理に応用できる。昔から「1個で酒一升飲める」と言われるほど酒のつまみにぴったりで、ビールのつまみにも最高だ。
この野菜はナス科トウガラシ属のピーマン型トウガラシで、長い間、農家が自家用などに細々と栽培していた。ピーマンよりも高い抗酸化性を持ち、辛み成分のカプサイシンをはじめ、ビタミンA、ビタミンC、ミネラル、フェノールやギャバなどが含まれている。
ピーマンのような果肉は独特の甘さがあるが、種の付いている白い芯の部分は強烈な辛味がある。標高が高い地域で栽培したものほど辛味が強いとされる。飛び上がるほどの辛さのものもあれば、辛味が薄いものなどさまざまだが、いびつな形ほど辛味は強いという。出始めはピーマンのような緑色だが、10月上旬になると赤色になる。
新潟県中越地方では「かぐらなんばん」と呼んでおり、「長岡野菜」として最近は知名度が上がっている。比べてみると、上越地方で栽培されているものより一回り大型で、辛味はやや弱い。
2011年8月に入ってから朝市を回ってみたが、上越市内ではどこにも並んでいなかった。妙高市新井地区の朝市(六十市)に並んでいたので、話を聞いてみた。
呼称は「ブタコショウ」「ボタコショウ」のほか、「デブコショウ」「俵ナンバン」と呼ぶ人もいるという。上越野菜では「オニゴショウ」の名で登録されているが、主に牧区での呼称だ。同区特産の辛味調味料「ぴりっ子」にも使われてる。
そもそも上越地方ではトウガラシのことをコショウと呼ぶ。そして、「ボタッとしているからボタゴショウ」「ブタのように丸々としているから」など、太めのピーマンのような独特の形状が名前の由来らしい。
ちなみに中越地方の「かぐらなんばん」は、ゴツゴツとした外観が神楽面に似ていることから付けられたという。
また、信州中野の斑尾山麓では「ぼたんこしょう」と呼び、「斑尾ぼたんこしょう保存会」を作って、ぼたんこしょう祭や、料理の即売会などを開いて普及活動を進めている。2010年7月には「ぼたんこしょう」(http://www.botankoshou.com/)の公式サイトもできた。
「斑尾ぼたんこしょう保存会」によると、果実の先端周辺には深い溝があり、複雑な形状が牡丹の花のように見えることから「ぼたんこしょう」と呼ぶという。
このことから呼び名は「ボタンコショウ」→「ボタコショウ」→「ブタコショウ」に変化してきたとみていいのではないか。
料理法
1)焼きコショウ
4~8等分に切って種や白い芯の部分を取り、軽く焼く。しょうゆやみそを付けて食べる。
2)しょうゆ漬け
種を切り、4~8等分に切り、しょうゆ2、みりん1の割合で漬ける
3)やたら
キュウリ、ナス、ミョウガ、大根のみそ漬けをみじん切りにし、ブタコショウのみじん切りも少し加える。水分を軽く絞り、しょうゆで味を調える。ご飯にのせて食べたり、麺類や冷奴の薬味にする。
4)天ぷら
衣をつけて揚げる
5)みそ炒め
ブタコショウとナスを切って油で炒める。火が通ったら砂糖、みそ、ごま油を加え、味がなじんだら出来上がり。
*注意点 辛味が強い種や白い芯の部分を取るときには、必ずビニールの手袋をして、皮膚に触れないようにする。