落ち葉集めに使う「びびら」ってなあに?

紅葉の季節が終わりに近づき、大量の落ち葉に困っている家庭も多いのではないか。その落ち葉をかき集めるのに大活躍するのが、上越方言で 「びびら」。つまり、竹製の大きな熊手のことである。最近では年配者以外、ほとんど使わなくなったが、上越地方特有の方言だ。

県内では新発田市、村上市岩船地区、三島郡出雲崎町、南蒲原郡田上町など、中・下越地区では「びんびら」と呼んでいる。「びびら」「びんびら」とも。新潟県以外ではほとんど使われていない。

びびらを持つ町井本店の町井正三さん
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妙高市中町の荒物店「町井本店」の三代目店主、町井正三さん(84)に聞いてみた。店頭にスゲガサ、ワラグツ、ミノボウシなどが並ぶ明治時代に創業した荒物店である。

「今はほとんどが中国などの輸入物になってしまったが、びびらは20年ほど前まで、柿崎の上下浜の農家が副業で作っていた。上越地方の荒物店はほとんど、上下浜で作ったびびらを扱っていたのではないか。昔は秋になると、カマドの焚きつけ用に落ち葉をびびらでかき集めて乾かし、炭俵に入れてとっておいたものだ。新井では爪が6本や8本のものが良く売れた」と言う。

材料の竹は佐渡の小木産を使っており、「丈夫で長持ちした」という。グラスファイバーが普及するまで、陸上競技の棒高跳びのポールとして世界の選手が使ったほどで、コシが強く、しなやかなことで知られる。剣道の竹刀の材料としても最高級品である。

「びびら」は竹製のものを指すことが多いが、農作業の田ならしに使う金属製のものも「びびら」と呼ぶ地域もある。

田ならしに使った金属製のびびら(牧区歴史民俗博物館所蔵)
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ところで、優雅な言葉の響きを持つ「びびら」の語源はなんだろうか。

荒物店などに聞いた限りでは知っている人はいなかったし、上越地方特有の方言とは知らない人も多かった。

これからは仮説なので眉唾物として読んでほしいが、舞妓や芸妓、花嫁などの髪を飾る簪(かんざし)の一種に「銀びら簪」(通称・ぎんびら)というのがある。京都市の簪専門店「金竹堂」に聞くと、「銀の短冊が何枚も簪の先についていて、歩くと揺れる」という。

舞妓や花嫁などが使う「銀びら簪」
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短冊がついた銀びら簪の形は、熊手にそっくりなのである。もしかして「ぎんびら」が「びんびら」になり、さらに「びびら」になったのではないか。

酒が好きな人を「左党」、焼き芋のことを「十三里」、質屋のことを「一六銀行」、ナスのことを「与一」などとしゃれていうのが好きな日本人。この仮説は、意外と当たっているかも。