久世光彦の妻・朋子さん(糸魚川出身)が本出版

作家、演出家などで活躍した故・久世光彦氏の妻、朋子さん(53)が2010年12月6日、高校時代3年間を過ごした上越市を訪れ、今まで語られることがなかった久世氏との秘められた愛の日々などをつづった初エッセー集「テコちゃんの時間 久世光彦との日々」(平凡社)の出版について語った。

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光彦氏はTBSのドラマ「寺内貫太郎一家」「時間ですよ」など多くのテレビドラマの演出で知られるほか、50歳を過ぎてから文筆活動に入り、1994年には山本周五郎賞を受賞。歌謡曲の作詞、エッセーなどでも活躍したが、2006年に70歳で急死した。

チャイナドレスが似合う朋子さん(2010年12月6日)
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朋子さんは糸魚川市生まれで、東本町や寺町に下宿して高田高校に通った。その後、「劇団に入りたい」と高校3年の夏休みに上京して、初めて光彦氏と知り合う。同書には、学生時代に長谷川和彦監督の「青春の殺人者」で映画デビューする際の裏話や、仕事のない日はアパートで光彦氏が訪ねてくるのをひたすら待つ苦しい胸の内などがつづられている。

ドラマ「ムー一族」の終了後に二人のスキャンダルが発覚。長男を出産し、その後光彦氏と結婚するまでの内情も初めて書かれた。光彦氏が好んだ食べ物、愛犬との交わりから、突然の死別など、これまで語られなかった日常なども、情感豊かな文体で記している。また、糸魚川や高田の情景、人々、思い出なども文中に登場する。

雑誌「月刊百科」に連載中は、評論家の坪内祐三氏が「久世光彦と向田邦子のDNAを引き継いでいる」と絶賛。筆力だけではなく、文章からは光彦氏への深い愛情が伝わってくる。

現在は、銀座でバー「茉莉花」を経営している朋子さんは、「私が久世の原稿の最初の読者で、最低2回は読んでいた。読むのは好きだが、自分が本を書くとは思わなかった。高田で下宿し読書と映画三昧だった高校時代の3年間は、自分の意識の中で大きい」と話していた。

四六判、198ページ。1600円(税別)。発売は2010年12月10日。