妙高高原駅前で名物のあんもちや笹寿司を販売していた妙高市田口の石田屋(合名会社石田商店・石田宇一郎代表)が2011年5月16日、事前告知もせずひっそりと閉店した。100年以上にわたって多くの人々に食べ続けられた郷土の味が消え去った。
名物あんもちは、信越線が国有鉄道になって2年目の1909年(明治42年)、田口駅(現妙高高原駅)前で世に出た。初代の石田宇八郎が、もち米を杵でつき、こしあんで包んで竹の皮に並べ、販売した。現在の店主は三代目だが、製法は当時のまま引き継いでいたという。
石田店主は「今回の地震の影響もあるが、かなり前からスキー客が減り続け、商売が成り立たなくなった」と話す。スキー客が1991年のピークから毎年減り続け、さらにはスキー客の交通手段が列車から自家用車にシフトしたことで、妙高高原駅に降り立つスキー客が激減したことが大きな要因のようだ。
「日持ちがするように保存料を使ったり冷凍などは一切せず、他の店が真似できない昔ながらの製法を受け継いできた」ことから、卸販売や通信販売などの販路拡大もできなかった。
また、笹寿司も人気だったが、今年2月末で販売を中止していた。
妙高市の観光商工課は「安心・安全な地場産品を『妙高あっぱれ逸品』として認定し、イベントで販売してもらったり、取り寄せできるように推奨している。しかし、申し出てもらわないと認定できないし、市としてはどうしようもない。昔ながらの製法のためか、あらい道の駅にも出していなかったし、それだけこだわりを持っていたのだろう」と話している。
店は5月15日まで営業し、翌16日には店頭に「閉店致しました 長い間のご愛顧ありがとうございました 石田屋店主」という紙を張り出した。