知られざる上越市出身のSF作家、伊野隆之

2009年12月にSF小説「森の言葉/森への飛翔」で第11回日本SF新人賞を受賞した伊野隆之さん(ペンネーム)が上越市出身であることは、地元ではほとんど知られていない。2010年11月5日に徳間文庫から「樹環惑星」と改題して発刊され、このほど高田と直江津の両図書館に寄贈されたことを機に、ベールに包まれた著者について紹介したい。

徳間文庫から発刊された「樹環惑星」
樹環惑星S

伊野さんは1961年8月24日生まれで、現在49歳。高田高校から東京理科大に進むまで、上越市で過ごした。受賞作は東京で国家公務員として勤務する傍ら執筆したもので、徳間書店が主宰する日本SF新人賞の第11回の受賞作となった。同新人賞はその後休止となり、最後の受賞者となった。

受賞当時は、父(78)にも知らせてこなかったという。「こちらの書店に売っていなかったので連絡したら、昨年10月に私と妻の分の2冊を送ってきた。ジャンル的にとっつきにくい内容で、難しかった。2回読んだら、何とか分かったが」と話す。

SF作家として活躍していることについて、「本は小さなころから一生懸命読んでいた。人からいたずらされても意に介さない子だった」と振り返る。

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伊野さんが今年の正月に帰省した際、10冊を持参したことから、弘さんが高田と直江津図書館に一部を寄贈したという。

作品は、惑星オパリアが舞台。酸素は十分にあるのだが、有害な化学物質を生み出す森のために、人類は高地の一部でしか生存できなかった。そこで新型の森林熱症候群が発生し、患者が急増する。女性化学者シギーラは、原因を解明するため、二十年ぶりに調査を始めた。その隠された秘密とは……。

徳間文庫。472ページ、800円。

*伊野隆之公式ブログ「INONYMOUS」
http://d.hatena.ne.jp/INOTAKAYUKI/

=川村=