【寄稿】雪の被害はお互い様? それとも… 豪雪被害に関する法律問題Q&A

上越地域の記録的な豪雪に際して、関東弁護士会連合会災害対策委員会副委員長の二宮淳悟弁護士(新潟合同法律事務所所属)から、雪による被害をめぐる法律問題について寄稿していただきました。

このたびの豪雪災害にあわれた上越の皆様方には心よりお見舞い申し上げます。さて、災害時には「お互い様」となることも少なくありませんが、一方で「トラブル」が生じることも。そういった「トラブル」を避けるため、あるいは解決するために、法律的な整理が必要な場合があります。そこで、豪雪被害に関わる法律問題について、Q&A形式でまとめてみました。個別のケースによって具体的な対応は異なりますので、お近くの弁護士までご相談下さい。

関東弁護士会連合会災害対策委員会副委員長・弁護士二宮淳悟(新潟合同法律事務所所属)

Q1:大雪で隣の家の屋根から雪が落ちて来て自宅の車庫や車が壊れました。修理代を請求できますか。

A1:雪国では、屋根からの落雪によって隣の家に被害が及んでしまうことは、通常予見することができますので、家の所有者には、適宜雪下ろしをしたり、雪止め金具等の落雪防止設備を設置したりする等して、隣の家に被害を生じさせないようにすべき義務があります(民法218条、同709条、同717条など)。このため、隣家の所有者が、雪下ろしを怠ったり、落雪防止設備を設置していなかったりした場合には、上記義務の違反を理由に損害賠償を請求できると考えられます。

もっとも、雪下ろしを適切に行っていたり、落雪防止設備等を設置したりしているにもかかわらず、予想外の大雪によって損害が発生してしまうこともあります。また、道路状況や除雪業者の事情等により、雪下ろしを行うこと自体が難しいこともあります。このように、やるべきことをやっていても結果が避けられない事情がある場合には、義務違反があるとは言えないため、損害賠償を求めることはできません。

Q2:少し気温が上がってきたため、隣の家の屋根の雪が自分の車庫に落ちそうになっています。落雪防止の措置を求めたり、雪下ろしをしてもらうように要求することはできますか。

A2:A1にも書いた通り、家の所有者は、屋根からの落雪によって隣家に被害を生じさせないようにすべき義務があります(民法218条等)。このためこのケースでは、隣家の屋根の雪が自分の車庫に直接滑り落ちてこないように、落雪防止の措置をとるよう求めることができます。適切な方法で雪下ろしをしてもらうこともその措置の1つと言えるでしょう。

Q3:公道を歩いていたら除雪が不十分だったために転んで怪我をしました。除雪を十分にしていなかった自治体に対して治療費等を請求できませんか。

A3:道路は区分に応じて国や県、市町村が管理しています。管理の不手際が原因で事故が起こった場合には、損害賠償請求ができる場合があります。ただし、今回のように記録的な豪雪の場合には、除雪が間に合わなかったとしても「管理の不手際」とまでは言い難いように思われます。

Q4:買い物を行った店の通路が凍結していたので滑って怪我をしました。店に治療費は請求できますか。

A4:お店には、客が転倒するなどして怪我をしないように対策を講じるべき義務があったと考えられますので、この義務が果たされていなかったと言える場合には治療費などを請求することができます。もっとも、客側にも落ち度があった場合には、その程度によって一定割合でしか請求できないこともあります。