上越市の新水族館は6代目 戦前からの変遷を写真などで紹介

昭和初期からの新潟県上越市の水族館の変遷を、写真や公文書、新聞記事などで振り返る企画展「上越市立水族博物館の生い立ち」が直江津図書館(同市中央1)で開かれている。今年6月に同市五智2に同市の新水族博物館「うみがたり」がオープンするのを前に、同市公文書センターが出前展示会として企画した。展示期間は2018年3月13日まで。同展示会の展示資料などをもとに歴代の上越の水族館を紹介する。

初代(1934年〜)

同センターによると、上越地域初の水族館は1933年(昭和8年)に能生町(現在の糸魚川市)の瀧榮六郎氏が開設した「能生水族館」。大小14の水槽にコイやナマズなどの淡水魚や、タイ、フグ、カニなどの海水魚約40種を展示し県外客も訪れ賑わっていたが、冬季休館中に大波を受けて破損しわずか1年で閉館した。このため瀧氏は翌1934年(昭和9年)に現在の同市西本町4の八坂神社境内に新たに「直江津水族館」を開設し、タイやマス、アオウミガメなどを展示した。この「直江津水族館」が上越市の水族館の初代にあたる。

2代目(1936年〜)

「直江津水族館」を開館した瀧氏が、水族館への接続道路や宣伝などで地元の直江津町の協力が得られないことを理由に開館2年目で閉館を決定。すると存続運動が起こり、最終的に1936年(昭和11年)、五智国分寺裏門の鏡池付近に移転新築し「五智水族館」が開館した。高田日報は「水色の小さな映画館風の極めてスマートな建物」と紹介している。糸魚川の海岸の波打ち際で捕獲されたアザラシを展示するなどして連日にぎわっていたが、戦争の影響で1943年(昭和18年)ごろ閉館した。

3代目(1949年〜)

戦後の1949年、直江津町の中田松三氏が現在の中央4の船見公園入口付近に「直江津水族館」を開館した。当時、海岸沿いの民家は砂浜と地続きで、木造平屋建ての水族館の建物も町有地の砂浜の上に建てられた。海水魚用と淡水魚用あわせて12の水槽とため池が2か所あり、海水魚約20種、淡水魚約10種を展示した。

しかし開館から2年で閉館してしまい、地元の有志約20人が買収して建物を継承し1951年に「財団法人直江津水族館」として再スタート。1953年には県教育委員会の認可を受け「水族博物館」となった。翌年の1954年には直江津町に移管され公営となり、市制施行によって「直江津市立水族博物館」と改称した。この頃は約40種の魚類のほか約50種の標本を展示した。

中央4の船見公園入口付近にあった直江津市立水族博物館(上越市公文書センター所蔵) 初代の直江津市立水族博物館

4代目(初代上越市立水族博物館、1957年〜)

施設の老朽化で現在の西本町4の海浜公園内に移転新築し、1957年に開館した。大小13の水槽のほか、観覧室中央の大水槽で日本海の魚などを展示し、3頭のオットセイが人気。屋外ではクマやサル、インドクジャクも飼育した。

直江津市の広報誌「広報なおえつ第73号(1963年)」は、「よろこばれる水族館」と題し修学旅行で来館した長野の小学生からの手紙を掲載している。

(前省略)私たちの県は、山ばかりで、海は、ぜんぜんありません。それに、こっちへ来る魚は、みんな死んでいるのばかり。(中略)私たちには、どんな魚もめずらしいのです。みんなに聞いてみると、しまだいと、いそぎんちゃくと、かれいと、ひらめとか、そういうものがよかったそうです。少しの人は、むらさきうにを見たら、山のくりを思いだしたそうです(後略)

1971年に、高田市と直江津市の合併で「上越市立水族博物館」と改称した。

西本町4の海浜公園内に開館した直江津市立水族博物館(上越市公文書センター所蔵) 新築移転した直江津市立水族博物館:外観

直江津市立水族博物館の敷地内にあったクマの飼育小屋(上越市公文書センター所蔵) 熊の飼育小屋

5代目(2代目上越市立水族博物館、1980年〜)

1980年に西本町4の県立直江津高校の隣に移転新築し、2017年5月14日に新水族博物館建設のため休館した旧水族博物館。国指定重要有形民俗文化財の「どぶね」と巻き貝をモチーフにした建物で、途中、マリンジャンボやペンギンランドなどの増改築も行われ、約400種1万点の水の生きものを飼育展示した。飼育数日本一を誇るマゼランペンギンや、夏季のイルカショーが人気で、37年間に約970万人が来場した。

2017年に休館した前上越市立水族博物館 水族博物館

6代目(3代目上越市立水族博物館、2018年〜)

新上越市立水族博物館「うみがたり」は、五智2の旧水族博物館第1駐車場に今年6月にオープン予定。生育地の環境を再現したマゼランペンギンの展示コーナーや、海の中を歩いているかのような感覚を味わえる水中トンネル、通年飼育するイルカプールなどが目玉の3階建ての施設となる。このほど国内5館目、県内では初となるシロイルカの飼育展示を行うことも発表された。

新水族博物館「うみがたり」のイメージ(上越市提供) New-aqua01

建設工事中の「うみがたり」(2018年2月15日撮影) うみがたり工事中

直江津図書館内展示コーナーで開催中の出前展示会では、水族博物館に関わる略年表や3代目の財団法人直江津水族館を公営化する際の入館者などの関係資料、1952年に直江津市が作成した観光リーフレット、市の広報誌「広報なおえつ」「広報じょうえつ」に掲載された時々の水族博物館の記事なども展示している。

同市公文書センターの武石勉センター長は「戦前にも水族館があったことを知らない人も多い。どんないきさつで直江津地区に水族館ができたのか、経緯をたどりながら見てほしい」と話している。問い合わせは同センター025-528-3110

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