温泉ファンにより野天風呂が再開 2年前に廃業した牧区の「鷹羽鉱泉」

2015年に廃業した新潟県上越市牧区宇津俣の秘湯「鷹羽(たかば)鉱泉」が、温泉好きのグループ「鷹羽会」によって施設が再整備され、入浴が可能になった。毎週日曜などに野天風呂が一般開放され、地元のほか、全国から秘湯ファンが訪れている。

頸城平野を一望できる野天風呂
onsen

日本海から佐渡まで一望できる絶景

上越市の高田市街地から南東へ約21km。牧区の深山荘付近からさらに南へ約2km入る。標高は580mで、市街地より気温は4度ほど低い。頸城平野はもとより、日本海や佐渡まで一望できる絶景の地だ。「鷹羽鉱泉」は、タカがけがをした羽を治したという言い伝えがあり、江戸時代は宇津俣湯として知られる古い温泉場だった。

1927年(昭和2年)に前経営者の佐藤敏男さんの先々代が、内湯を住民らに開放したのが始まり。1965年ごろまでは宿泊もできた。コイ料理や山菜料理が自慢で、温泉ファンでにぎわった。しかし、佐藤さんが高齢になり、後継者がいないことから、2015年10月末で廃業した。

温泉好きが高じ、知人ら6人で出資して建物と施設を買い取ったのは「鷹羽会」代表の男性。傷んだ施設を直し鷹羽鉱泉の営業を再開しようとしたが、一度廃業届が出されたため、新たに営業許可を取得するのは至難の業。公衆浴場法の規定により、脱衣場の仕切り、男女別のトイレ、水飲み場の設置などが求められ、営業を再開するには施設を改築するほか道がなくなった。

温泉営業を断念し「野湯」として開放

温泉営業を断念したのは今春。「引き継ぐときに廃業せず、既得権益を生かせば良かったが、知識がなかった。一度は再開をあきらめたが、“みんな(出資者)の別荘でもいい”と割り切り、営業許可が必要ない「野湯」として7月から一般開放を始めた。採算はとれないが、風呂の入り口に箱を置き、寸志を募っている。「鉱泉は10度前後と冷たいが、自然に湧いている天然ガスで加熱するし、水も湧き水なので経費が助かっている」と話している。

奥の湯船
鷹羽鉱泉2

硫黄臭漂う硫化水素泉をかけ流し

岩風呂風の湯船は大小あるので、女性の入浴も可。湯船からは頸城平野が一望でき、開放感抜群。秋には紅葉を眺めながら入浴できる。

泉質は上越地域では珍しい硫化水素泉で、1日当たり1万2000リットルを自噴している。乳白色で硫黄臭があり、細かな湯の花も浮かぶ。1966年時点の分析によると、適応症は高血圧症、動脈硬化症、末梢循環障害、リウマチ性疾患など。利用者からは特に「あせもが治る」などと評判だという。

入浴していた上越市頸城区の男性(77)は「今回で4回目。体がすごく温まる。景色も素晴らしい」と話していた。

屋内休憩室。屋外にも休憩所がある
休憩室

場所は、深山荘の手前200mを右折し約2km。Googleマップのナビでは「上越市牧区宇津俣1512-5」で設定するといい。

施設の開放は日曜が中心で、連休や平日の開放の際はブログで告知する。開放時間は午前10時~午後4時。今年は11月末まで開放する予定。飲食物は持ち込み可。

◇鷹羽鉱泉ブログ http://ameblo.jp/takabakosen/

鷹羽鉱泉