上越市の井上健一郎さん 「横丁」の歴史と魅力まとめた著書発刊

終戦直後に生まれた闇市を起源とする「横丁」の調査、研究を続けてきた新潟県上越市東雲町2の会社役員、井上健一郎さん(31)が、これまでの成果をまとめた著書「吉祥寺『ハモニカ横丁』物語」(図書刊行会刊)を出版した。同横丁の成り立ちから現在までの変遷を中心に、横丁の持つ魅力を明らかにしている。

著者の井上健一郎さん
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「横丁」は都市のガード下、線路の脇などに並ぶ一杯飲み屋など間口の狭い店が立ち並ぶ路地。井上さんは法政大工学部に通う学生時代、吉祥寺のハモニカ横丁に恐る恐る足を踏み入れたのがきっかけ。間口の狭い小さな店がハーモニカの吹き口のように並んでいた。行列ができるパスタ店が出店するなど、「レトロとモダンが融合する街」に魅せられた。

「横丁では、見ず知らずの人とすぐに打ち解けて、会話が始まる。のれんをくぐると自分を締め付けている属性から解放され、社会的地位も関係なく、一人の人間としての自分を確認できる」と、夢中になって通いつめた。

都市計画のゼミでは、闇市があった街を調べた。ハモニカ横丁を主に実地調査を行い卒業論文にまとめた。この論文が反響を呼び、社会学者で早稲田大教授の橋本健二さんらと出会いがあり、2009年に会員8人で構成する「ヤミ市研究会」が生まれるに至る。各自の研究成果をまとめた著書が「盛り場はヤミ市から生まれた」(2013年・青弓社)だった。

大学を卒業後は新潟市での会社勤務を経て、故郷の上越市に戻って4年目。現在でも週末のライフワークとして、東京や全国の横丁巡りに飛び回る。ホームページ「ヤミ市横丁研究所」も立ち上げた。町づくりのシンポジウムなどに招かれることも多いという。

本著は横丁ガイドでもあり、文化論でもあり、社会学や都市政策などの本としても読める。「多くの切り口があり、いろいろな分野からアクセスできるのが横丁の魅力。次は全国各地の横丁をテーマにした本を出したい」と話している。

四六版、202ページ、1458円。上越地域では、戸田書店上越店、文教堂新井店などで取り扱っている。

↓「ヤミ市横丁研究所」の公式サイト
http://yamiichiyokocho.cho-chin.com/