上杉謙信の居城「春日山城」の建造物復元は困難 国の復元実現可能性調査

戦国武将、上杉謙信の居城だった新潟県上越市の春日山城の復元実現可能性について調査していた国土交通省北陸信越運輸局は2024年4月8日、春日山城に関する史料がないことから「復元整備は難しい」との調査結果を公表した。春日山は、地元の上越市が2023年度に策定した通年観光計画で重点地域と位置付けられている。国の調査は2024年度も継続して行われ、建造物ではなく堀や土塁、曲輪(くるわ)といった地形や山城の景観の復元について検討する。

春日山城跡

調査は、将来にわたって国内外から旅行者を引き付け、継続的な来訪や消費向上につながるレガシー(遺産)となる観光資源の形成を目的とした、国の「地域・日本の新たなレガシー形成事業」に上越市が応募して採択を受け、昨年度に行われた。

調査報告書によると、春日山城の建物が描かれたものは幕末になって登場したと考えられ、それを根拠として建物を復元整備することは難しいとした。また発掘調査で城の遺構や遺物が出土したとしても、上杉謙信、景勝、堀氏という歴代城主の時代間隔が短く、どの時代に該当するかの確定が困難としている。

このため、本丸や二の丸などでの建造物や工作物の復元整備は、史料がなく復元根拠が整わないため難しいと結論付けた。その上で堀や土塁、斜面を削った平坦地の曲輪といった山城の景観を復元することを提案。具体的には、堀の内部に堆積した土砂の撤去や、曲輪や土塁の法面の保護、繁茂した雑木や雑草の除去などを挙げた。

上越市の通年観光計画で復元が計画されている土塁と堀からなる総構の一部

上越市の通年観光計画では、春日山城の最大の特徴とされる山城の東裾野に1.2kmにも及ぶ堀と土塁からなる総構(そうがまえ)の復元や、昭和になって植林された杉を伐採して山城の輪郭をわかりやすくし、現存する最古の約100年前の写真の姿に戻すとしている。

同市は本年度のレガシー形成事業に再度応募し採択されており、国による調査が引き続き行われる。

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