毎年海水浴客でにぎわう新潟県上越市大潟区の鵜の浜海岸の海岸浸食が、2024年に入り深刻となっている。昨年末には波打ち際が迫った同海岸のシンボル「人魚像」が一時的に撤去されたが、年が明けてからもさらに浸食が進行。海水浴場の砂浜が大きく削られ、今夏の開設への影響が懸念されている。
砂浜えぐり取られ傾斜護岸が露出
海岸浸食は河川からの土砂供給の減少や沿岸構造物の建設による漂砂の阻止などの様々な要因によって、全国各地の海岸線で問題となっている。日本海に面した大潟区も長年海岸浸食に悩まされてきたが、鵜の浜海岸については今年に入って急激に深刻化した。
2024年1月14日と3月1日に同海岸を撮影した写真を見比べると、わずか1か月半の間に砂浜の砂が大量になくなり海岸線が後退している。1月には人魚像を設置していた土台付近にはまだ砂浜が広がっていたが、3月には砂が大きくえぐり取られ、傾斜護岸が露出してしまっていた。人魚像があった土台付近は、所管する同市柿崎区総合事務所が危険として1月下旬からバリケードを設置し「立ち入り禁止」にしている。同事務所などによると、長さ約100〜120mの海水浴場のうち約50mにわたって砂が流出している。
昨年海水浴に2万5000人
市が設置し委託を受けた大潟観光協会が運営する鵜の浜海水浴場には昨年、猛暑や台風の影響でコロナ禍前までの回復とはならなかったが約2万5000人の入り込みがあったほか、9月の花火大会「鵜の浜温泉色彩音楽花火」では約4000人の観衆が砂浜に座って打ち上げ花火と音楽の競演を楽しんだ。このまま浸食が進めば同区の観光資源である海水浴場や花火大会に支障をきたし、隣接する市内唯一の温泉街、鵜の浜温泉への影響も心配される。
この問題は市議会でも取り上げられた。文教経済常任委員会では上野公悦議員が「どんどん浸食されてひどい状況だ。このままでは海水浴客を受け入れられないのではないか」、一般質問では同区在住のストラットン恵美子議員が写真を示しながら、「いつも見ている砂浜が背筋が凍るというかびっくりするくらいの様子。たったこの冬でここまで砂が取られるのかと、すごい状況だ」と訴えた。
中川幹太市長は、2021年に隣の雁子浜海岸の砂浜が波浪で消失し、県が海岸浸食対策として本年度から約10年をかけて沖合に離岸堤2基を建設することから「鵜の浜海水浴場の砂浜にも一定の効果が表れると考える」とした上で、「(鵜の浜海水浴場は)当市の大切な観光資源。今年の開設について庁内で具体的な検討を進めており、今の状況でどうやったら海水浴場が開けるのか、現場に合わせて取り組んでいくしかない」と答えた。
3月25日に市と関係者で会議を開き、対応を協議するという。