給食アレルギー事故報告書 検証不十分 対応時間や誤食量など評価なく 主治医の協力も得られず

上越市教育委員会は昨年9月に市立小学校で起きた給食アレルギー事故の報告書を作成し2024年2月14日、記者会見した。市教委は、医師ら外部有識者から意見を聴取して作成したとしているが、報告書には事故発生当初の対応時間や誤食量の評価などの記載がない。また、アレルギーの専門医である被害児童の主治医の協力も得られなかったと報告した。

記者会見した市川均教育部長ら

被害児童のPTSD記載せず

被害児童は重度の牛乳アレルギーで、給食のスープに乳成分が含まれる食材が使われたことでアナフィラキシーショックを起こし、救急搬送され一時入院。主治医によると事故後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になり、学校生活に支障をきたしている。しかし、報告書にはPTSDという病名も記載されていない。

市教委は「記載はないが児童が心に負った傷を私達は感じている。まずは心のケアに取り組んでいる」などと説明した。

過去の食材未確認も不記載

報告書は事故原因を①栄養教職員が食材の配合成分表を事前に取り寄せず未確認のまま発注したこと②調理員がその後の確認を怠ったこと──の2点に整理している。栄養教職員が配合成分表の取り寄せを怠った事実は、今回の事故以前にもあったにもかかわらず、報告書には記載されていない。

市教委は「今回は冷凍クリームコーンで、過去のものは(今回の事故の)直接の原因ではなかった」などと説明した。

エピペン使用まで18分 早かった? 遅かった?

発症からアナフィラキシー症状を抑える「エピペン」の使用までの時間を18分と記載。上越市のマニュアルでは「5分以内に判断する」とされ、東京都調布市で2012年に起きた事故では14分後にエピペンを打った小学5年女児が死亡している事実がある。報告書には、対応時間の遅速についての評価はない。

市教委は「18分というのはこれだけの苦しい思いを児童にさせたということ」「他の事例と比較する手法もあったが今回は取らなかった」などと説明した。

誤食した乳の量も評価せず 主治医「致死量」「いき値の2000倍」

児童が摂取した乳製品の量について、主治医が「いき値の2000倍、致死量に相当する」と推定しているが、報告書では「脱脂濃縮乳摂取量0.03g」と記載しているだけで、危険度などの評価はない。

主治医の協力得られず 教育長「割り切っている」

主治医は市教委の要請で事故後の昨年11月、市立小中学校の教職員を対象とした緊急対応研修会の講師を務めた。しかし市教委は今回の報告書作成にあたっては主治医の協力が得られなかったと説明した。

早川義裕教育長は報道陣の取材に対し「我々の思いと主治医の思いがどこかで違ってしまった。ただ、我々が向いているのは主治医ではなく、あくまで児童と家族で当該者のケアと再発防止。そういう風に割り切っている」と説明した。

▼報告書PDF

関連記事

www.joetsutj.com