自衛隊による隊員募集のため新潟県上越市は本年度から、対象となる市民の住所と氏名を住民基本台帳から抽出し、郵送用の「宛名シール」を作って自衛隊に提供している。野党系県議や市議が2023年6月26日、同市に対し個人情報の提供中止を求める要請書を提出した。
要請書を提出したのは、牧田正樹県議(未来にいがた)と馬場秀幸県議(無所属)、共産党の市議3人。
自衛隊が住基台帳閲覧→上越市が宛名シール作成・提供
自衛隊はこれまでも隊員募集のため、18歳と22歳の市民の情報提供を市に求めてきた。同市の個人情報保護条例(現在は個人情報保護法)が個人情報の外部提供を原則禁じていることなどから、自衛隊側は自衛隊法施行令と住民基本台帳法を根拠に台帳閲覧を市に請求し、市は自衛隊新潟地方協力本部職員が対象者の住所や氏名、性別、生年月日を書き写すことを認めてきた。
2021年2月、防衛省と総務省が自衛隊法令に基づく資料提出として住民基本台帳の一部の写しを提出することは問題ないと通知。その後、新潟地方協力本部から同市に対して、名簿で住所、氏名、性別、生年月日の資料提出依頼があった。同市は郵送に必要な住所と氏名のみを記載した宛名シールを作成して提供する方が個人情報が限定されると判断。本年度からシール提供を実施している。実施にあたり、自衛隊側がシールをコピーするなどの手段で個人情報を保有しないことを確認する覚書を交わした。
3275人分の宛名シール提供
本年度は6月19日に、年度内に18歳になる1667人と22歳になる1608人の市民計3275人分の宛名シールを市が作成し、自衛隊新潟地方協力本部に提供した。市によると、長岡市や新潟市でも同様に宛名シールを提供している。
県議ら市に中止要請
弁護士でもある馬場県議は「法律には必要がある場合は閲覧することができるとされており、宛名シールまで差し出すようなことは書かれていない。個人情報であり、プライバシーの侵害にあたる。やめていただきたい」と提供中止を求めた。
オプトアウト制度新設も短期間で削除
市は対象者が自らの個人情報の提供を拒むことができる除外申請制度を本年度新設したが、周知は市ホームページへの掲載のみで、手続きが可能な期間がわずか19日間だった。実際に申請したのは1人だけだった。
また、除外申請の方法が記載されたページはその後削除され、情報提供の事実や除外申請制度が市民には分からない状態となっている。
要請書を受け取った八木智学副市長は「法令にのっとり、国や県の通知に基づいて行っている。除外申請の周知はホームページに掲載したが、短かったのは配慮が足りなかった。今後改める必要がある」と述べた。
【7月4日追記】上越市は2023年7月4日からホームページに再掲載しました