JAえちご上越が生産拡大目指すヨモギ栽培に農福連携 障害者や高齢者が葉こき作業

中山間地域の休耕地などを有効活用したヨモギ栽培に取り組む新潟県上越市のJAえちご上越は、生産拡大に向けた新たな取り組みとして、収穫後のヨモギの乾燥作業などを障害者就労支援事業所や高齢者デイサービス施設に委託する「農福連携」の試行を始めた。初日の2023年6月15日は、かつて乾燥ヨモギを出荷していた高齢者などが葉と茎を分ける「葉こき」作業に励んだ。

ヨモギの葉こき作業をする高齢者や障害者ら

ヨモギはキク科の多年草で、野山や道端に自生している。乾燥ヨモギは、葉の裏にある細かい綿毛がおきゅうのもぐさとなるほか、近年は健康食品などの原料として需要が高まっている。市内ではかつて中山間地の家々が自生するヨモギを集めて乾燥させ業者に定期的に出荷していたことから、休耕地で栽培することで農家の所得向上につなげようと、同JAが2021年から試験栽培に取り組んでいる。同年に試験栽培を始めた板倉区と牧区に加え、浦川原区や大島区でも栽培が行われている。

棚田が広がる山あいの休耕地で栽培されているヨモギ(同市板倉区久々野)

これまでの試験栽培では、収穫直後のヨモギの茎から葉を取る作業に農家の手間や人件費がかかり課題となっていた。このためヨモギ栽培を行う柄山そば生産組合(板倉区久々野)が、上越市社会福祉協議会が運営する福祉施設「みやじまの里」(同区宮島)に葉こきや乾燥作業を委託した。この日は、施設内にある障害者就労支援事業所や高齢者デイサービスの利用者約15人が参加。生産組合が収穫したヨモギ約10kgをビニールシートに広げ、軍手をはめた手を茎の先端から滑らせるようにして動かし、葉と茎を分けていった。

慣れた手つきで作業に励んでいたデイサービス利用者の男性(88)は「昔ずっとやっていた。道路にまで広げて干したこともあった」と懐かしんでいた。

収穫されたヨモギを前に作業の説明を聞く参加者ら

同市社会福祉協議会板倉支所の南直樹所長は「高齢者の方は作業が早くて驚いている。地元での取り組みに関わらせてもらえることで、障害者や元気な高齢者の役割ができる」と喜んだ。天候に関わらず乾燥作業が行えるよう、同社協が所有する空き施設の利用も検討しているという。

柄山そば生産組合代表で同JAの笠鳥健一総務部長は「栽培だけでなく山には採りきれないくらいヨモギがあるが、収穫後の作業が大変だった。連携が進めば、上越の品質のよいヨモギをより多く全国に出荷することができる」と期待していた。