上越市初、NPOが有償運送 中ノ俣から高田地区のスーパーへ 高齢者の買い物など支援

バスや鉄道が走っていない新潟県上越市中ノ俣地区の住民の移動手段を確保するため、NPO法人「かみえちご山里ファン倶楽部」は2020年7月9日、同地区と高田地区のスーパーを結ぶ自家用有償旅客運送を始めた。NPOによる公共交通空白地での有償運送は市内初。初日は5人が利用し、買い物やほかの利用者との会話を楽しんでいた。

ナルス南高田店に到着した中ノ俣地区の住民ら
20200709中ノ俣買い物支援

中ノ俣地区は常設の医療機関や商店がなく、今年6月時点で住民59人中53人が65歳以上と、高齢化が進んでいる。今後は車の運転が困難な住民が増えることから、昨年10月に移動手段の確保を求める声が住民から上がり、同地区を含む中山間地域で活動する同NPOが対策を検討。今月6日に県から有償運送の承認を得た。

ルートは中ノ俣研修センターから、ナルス南高田店(中田原)を経由し、イチコ高田西店(飯)まで。区間内であれば、どこでも乗り降り自由。事前予約制で毎週木曜午前に1往復し、運賃は片道500円。市によれば、同センターからナルス南高田店までのタクシー運賃は約6000円だという。

運行初日の9日、10人乗りのワゴン車に住民5人が乗車した。1人は書店を希望したため蔦屋書店が隣接するナルス高田西店(大貫4)で下車。4人はナルス南高田店で下車し、100円ショップや農協などでの用事も済ませていた。

2年前に車の運転をやめた田中竹治さん(92)は、「買い物は土日に子どもがしてくれるが、自分でもできるのはありがたい」と感謝。宮本行雄さん(82)は現在車を運転しているが、「いずれお世話になると思い、どんなものかと参加した。楽しく用事もできて良かった」と喜んでいた。

同NPOの神崎淑さん(36)は「(住民が)長く中ノ俣で暮らしていけるよう少しでも助けになれば。うまくいけば、ほかの中山間地域でもやっていきたい」と語った。

NPOなどによる有償旅客運送は市も支援しており、運行経費の補助金を出している。市交通政策課は「公共交通空白地では、地域の力を借りながら移動手段の確保に努めていきたい」と話した。